「夏の着物の絽(ろ)や麻などは良く聞くけど、他にはどんな種類があるの?」
「夏の着物で涼しい素材は何がおすすめなの?」
と、いまいち夏の着物について知らないことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は夏の着物のコーディネートにおすすめな涼しい素材の着物を紹介したいと思います。
夏着物の絽とは?
夏着物の代表と言えば絽を思い浮かべることが多いと思いますが、絽とは着物だけでなく、長襦袢、半襟、帯揚げなどにも使われる生地の織り方の名前です。
なので、絽の織り方で作られた素材には絹や麻やポリエステル、その他の多くの素材があります。
暑い夏に絽の着物は見ているだけでも涼しく感じられますが、絽には三本絽や五本絽や経絽などの種類があります。
三本や五本とは絽の独特の織り方で、もじり織の間に何本の平織りがあるかを示している数です。
絽は下の画像のように二本の経糸(たていと)をもじりながら緯糸(よこいと)を織り込んだからみ織からできています。
もじった経糸の間に平織りをすることで、生地に隙間ができ、透け感のある涼しげな生地のことです。
絽の織り方(三本絽)
三本絽は経糸の間に三本の緯糸をはさんだ織り方、五本絽は経糸の間に五本の緯糸をはさんだ織り方から作られています。
七本絽、九本絽といったように織り方の違いで本数が変わっていき数字が大きくなるほど隙間が少なく、透け感が無くなります。
着物として使われる絽は三本や五本絽が多いですね。
また、経糸で隙間をを作る経絽という織り方の着物もあり、普通の絽より透け感の少ない生地ですが、たて縞(しま)なので、着やせ効果もありますね。
絽は織り方の名前なので、素材は絹やポリエステルなどがあり、夏の代表的な染下地の生地(白生地)として織られて、後から柄染めをして留袖、訪問着、色無地、小紋などになります。
そのため、染め物になるので結婚式やお茶席などのフォーマルの席にふさわしい少し格の高い着物です。(小紋は普段着)
着物の場合は、着物の「種類」「文様」「紋の数」「帯との組み合わせ」など様々な違いで格が変わってきます。
絹でできている絽は、絹の特徴である吸湿性・通気性にすぐれ、いつでもサラサラな質感を保ってくれるため、夏は涼しく感じられます。
お蚕さんがはく天然繊維が、肌触りがとても滑らかでやわらかく自然の気候に対応してくれる繊維なので暑い夏でも快適な着心地でいられると言うことですね。
自宅で洗濯ができるポリエステル生地もよく見かけますが、最近は技術が進み、絹なのに特殊な加工がされて自宅で洗濯できる絽の生地などもあります。
夏の着物で洗濯ができると言えば、他にも麻の着物がありますね。
どうしても汗をかいてしまう夏におすすめな素材として、絹と同じく天然素材なのに自宅で洗濯できる麻は、夏着物として絹より人気なのではないでしょうか。
次はそんな夏におすすめの麻の着物について紹介します。
夏着物の麻とは?
着物と言ったら絹の着物をイメージしがちですが、麻の着物も古くから皇族から庶民までの衣服として身近に存在していました。
そして麻でできた着物の最大の特徴は自宅でお手入れができると言うことなので、汗を大量にかいてしまう夏にはもってこいの素材ですね。
麻の着物は植物の麻(苧磨チョマ)から作られたサラッとした生地で、肌にまとわり付かないため着心地が良いと言うことも、もう一つの特徴です。
麻は吸湿性、速乾性に優れているため、いつでもサラッとした着心地でいられるのと、生地の作り方で表面に凸凹としたシボを持たせるため、肌との接着面が少なく涼しく感じられることも夏に人気の要因です。
糸に撚り(より)をかけ糊で固めた状態で生地を織る。
↓
織り上がってからお湯で糊を落す。
↓
糸の性質がよみがえり縮む。
↓
生地にシワができる。
麻は繊維が軽いため、一枚でも少なく着たい夏は着ていて楽ですが、絹などに比べるとシワが残りやすいので立ち振る舞いには注意が必要になります。
麻の着物でも上布と呼ばれる「越後上布」「能登上布」「宮古上布」「八重山上布」など上質な布(麻)でできた着物の中には国の重要無形文化財にも指定されている高級な着物もあります。
しかし、麻で作られたどんなに高級な上布でも普段着としてしか着る事はできず、社交の場には不向きです。
一方、近江縮や小千谷縮など縮と呼ばれる麻の着物もあり、一般的には上布ほど高値ではありませんが、作り方の技法によっては国の重要無形文化財に指定されている高価な小千谷縮も存在します。
縮とは、シボがある麻の事で肌との間に隙間を作ってくれ、吸湿性、通気性にも優れているので、湿気の多い日本のジメジメした夏にはピッタリな素材になります。
夏に麻の着物が好まれる理由に自宅で洗濯できることがありますが、国の重要無形文化財に指定されている上布や小千谷縮などはとてつもなく高価なので、自分で洗うのはとても勇気がいりますね。
一般的に量産の小千谷縮や近江縮などは比較的安価で手に入るので、この様な麻の着物は汗をかいても安心して洗濯できるので夏の着物としては嬉しいですね。
自宅で洗濯する場合は、天然素材なので多少は縮むので仕立ての際にあらかじめ大きく仕立ててもらうのが一般的です。
ここまでは絽、麻と夏の代表的な着物の種類を紹介しましたが、他にはどのような夏の着物があるのか見ていきましょう。
夏の着物の種類
夏の着物と言ったら絽(ろ)、紗(しゃ)、羅(ら)の三種類の着物が有名ですが、この三種類の着物は共に織り方の違いの名前です。
絽→紗→羅の順に生地の透け感が増しますが、羅は主に帯に使用される織り方の名前になります。
絽の織り方
紗の織り方
羅の織り方
それぞれの織り方の違いからも羅が一番隙間が空いていて、見るからに涼しげなのが分かりますね。
絽、紗、羅の他にも夏の着物には自然布と言われる植物の繊維から取った糸で織られている着物や帯も欠かせないです。
自然布には主に下記の様な種類があります。
- 芭蕉布(ばしょうふ)
- 藤布(ふじふ)
- 科布(しなぬの)
- 葛布(くずふ)
- からむし織
- ぜんまい織
- アットウシ織
自然布はその名の通り自然の植物から作られているため、質感や肌触りなどなじみが良く夏の着物として古くから着物好きの間で好まれています。
以上のように、夏の着物と言っても織り方の違いや素材の違いから、いくつもの種類があるのが分かりますね。
ですが、これだけの種類をどう夏に取り入れてコーデネイトをすればよいのか悩んでしまいます。
そこで少しでも涼しく、着心地も良い夏の着物でおすすめな素材を紹介します。
夏に涼しい着物の素材でおすすめは?
ただでさえ暑い夏はやはり着心地も見た目も涼しい着物を選びたいですよね。
夏の着物には絹でできた着物や麻でできた着物や、上記で紹介したその他の植物からできた着物など種類は豊富です。
これらの夏着物と言われる着物は、素材の特徴や、織り方の特徴から分かるように、夏に快適な着心地でいられるようになっているため、どれも涼しくておすすめです。
夏着物をコーデネイトする際に気を付けたいのは、お出かけ用の着物なのか普段着用の着物なのかと言うことです。
お出かけ用の着物(フォーマル着物)としては、絽や紗でできた留袖、訪問着、付け下げなどは、お出かけ用の格のある夏着物としておすすめです。
絽の留袖
紗の訪問着
普段着としての夏着物は絽や紗でできた小紋がおすすめです。
紗の小紋
他の普段着の着物には夏大島や、夏結城など紬地でも夏専用の紬の着物をおすすめします。
夏大島
自然素材の麻(上布や縮)でできている着物もサラリとしていて肌にまとわりつくことがなく風を通してくれるので夏にはおすすめの素材です。
小千谷縮
その他の下記の自然布も、夏におすすめな普段着用の着物の種類です。
- 芭蕉布(ばしょうふ)
- 藤布(ふじふ)
- 科布(しなぬの)
- 葛布(くずふ)
- からむし織
- ぜんまい織
- アットウシ織
以上のような夏におすすめの素材を着物だけでなく、長襦袢や帯等にも取り入れ涼しくコーディネートして、見ている人にも涼を感じてもらうことも、着物の醍醐味の一つですね。
様々な素材の夏着物は、いつからいつまで着て良いのかおおよその着用時期などもありますが、下の記事に詳細が書いてあります。
こちらの記事は5月から9月まで月ごとに使用できる着物や帯、半襟に長襦袢や帯揚げが紹介してあります。
季節はずれのコーディネートをしないためにも着物の種類と共に、おおよその使用時期を把握しておくことをおすすめします。
最近の夏は特に暑く着物を着て出かけるには、厳しい日々が続きます。
今までの決まりやルールでは対応できないこともありますので、その日の気温や自分の体調と相談しながらコーディネートを決めると良いですね。
古くから日本の環境や風土に合った自然の恵みを取り入れ、その時期に対応した織り方で作られてきた着物。
せっかく夏に着物を着るのなら、
「より快適で涼しい」
いくつもの種類の夏着物を楽しみたいですね。
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