米沢紬新田織物

東北地方の日本海側に位置し、全国の7割を占める
「さくらんぼ」の産地として有名な山形県
は着物の染織産業も盛んに行われているのをご存知ですか?

日本海に連なる庄内平野
日本百名山に数えられる美しい山々に囲まれた盆地
最上川が流れる自然豊かな風土ならではの染織文化。

はるか昔から自然と人間が調和して存在し
今でも地元で取れる植物から手染めをして伝統的な工程で織物を作り上げています。

今回は、そんな山形県で作られている米沢紬(織)を紹介します。

山形県で作られる米沢紬(織)とは?

山形県米沢市を中心に生産される織物を米沢紬といいます。

米沢地区
それに加えて山形県の置賜地区の「米沢市、長井市、白鷹町」を中心に生産される
織物の総称を米沢織置賜紬と呼ぶ人もいます。

米沢織には、米沢紬、長井紬、米琉の他に
比較的最近に作られた白鷹御召などがあります。

江戸中期、米沢藩主の上杉鷹山(うえすぎ ようざん)が養蚕や織物を産業として確立させて
この地域に絹織物が発展しました。

それから約200年経った現在でも
山形県は日本でも有数な織物産地の1つとして
多くの着物愛好家が現地を訪れたりと人気の一途をたどっています。

そして、米沢紬が持つ
歴史の中から育まれた伝統的な特徴が、
「上質な物」を生活の中に取り入れて
人生を豊かに愉しむ女性に人気なのです。

自然が織りなす米沢紬の特徴・紅花染とは?

米沢紬の特徴の1つに、先染めがあります。

先染めとは

先に一本一本糸を染色して色糸を作ってから、その色糸を組み合わせて織っていくこと。
先染め以外の織物は、白糸の状態で先に一枚の布に織り上げて、後から染の加工をします。

米沢紬は無地一色だけではなく、格子や間道、よろけなど多色多様な紋様があります。

先に染織された糸を一本一本組み合わせて紋様を織っていくことで
後から染めた物とは違った、どこか温かみがあり
それでいて織り物独特の繊細な風合いが特徴です。

そして、山形県の県花にも指定されている紅花を使い染色することも特徴の1つです。
山形県紅花米沢紬
(引用:山形県観光協会HP)

毎年、夏至から数えて約11日目の半夏生(はんげしょう)の朝に
ぽつんと一輪の紅花が咲きます。

昔から、毎年変わらず“半夏ひとつ咲き”を合図として、一斉に開花する紅花を使い
染料をいくども重ね染めすることで
他にはない自然の恵みをたっぷりと含んだ
ふんわり優しい百色の色相ができあがります。
新田織物紅花染着物
(引用:株式会社新田さんHP)

紅花染めは、一度だと薄いピンク色に見える一斤染(いっこんぞめ)と言い一反の生地に紅花が600gは必要とします。

この一斤染(いっこんぞめ)を何度も繰り返すと深紅の韓紅(からくれない)色になるそう。

ほかにも染料として藍、苅安(かりやす)などをかけ合わせて
伝統の草木染めだけでなく、さまざまな色も作り出しています。

9代目米沢藩主の上杉鷹山無しでは語れない歴史

先染めや紅花染という、高度で繊細な技術を必要とする米沢紬は
9代目米沢藩主の上杉鷹山が大きな関わりを持ちます。

そんな米沢紬の歴史は上杉藩の米沢入城から始まります。

関ヶ原の戦いの後、上杉家は会津120万石から米沢30万石に移封されました。

移封

大名などを他の領地へ移すこと。


藩主上杉景勝の側近だった直江兼続(なおえかねつぐ)は藩の収益拡大のため
織物の素材となる青苧(あおそ)やお蚕さんのエサの桑
染料となる紅花などの栽培を勧めました。
直江兼続
直江兼続

これらを藩の米沢の特産物として
さまざまな織物産地に売って藩の財政の基盤としていきました。

そして江戸中期になって米沢織を産業として確立させたのが、
米沢藩主の上杉鷹山です。
上杉鷹山米沢紬

  • 武家の婦女子に内職として機織りを習得
  • 養蚕業に力を入れる
  • 本場・京都(越後)から縮織物師を招いて研究開発

などを取り勧め、
米沢の織物産業が飛躍的に発展しました。

この時期に紅花や藍、紫根(しこん)など
植物染料で糸を染めてから織る「先染め」の技術が確立され
米沢織として全国に知られるようになりました。

明治から昭和にかけ手織機に代わり
力織機(りきしょっき)が導入されて生産量もまかなえる設備が整いました。

海外向け製造も始まり、主にインドやアメリカに輸出されました。

130年ほど続く米沢紬代表の株式会社新田さん

米沢市は撚り糸製作を専門とする工房から、織り縫製を行う工房まで、すべてが揃っているいわば分業制で成り立っている。

市内で糸から製品になるまでの全てまかなえるのは、京都以外は全国的にも大変珍しいことです。

それぞれの工房が日々、新しい技術、新しいアイディアを生み出し製品づくりに励んでいます。

そんな中1つの機屋で、染めの作業から織りまで一貫して着物作りをしているのが、株式会社新田さんです。

「新田」のロゴマークでもある紅花柄が入った証紙は
見たことがあるのではないでしょうか。
新田織物証紙
もともと米沢藩の武士の家であった新田家は
現在まで五代にわたって続く織屋さんです。

明治時代以降の化学染料の輸入や
第二次世界大戦の食用の作物を栽培することが優先された頃に
換金作物であった紅花の栽培の禁止令を受けて
一度は途絶えてしまった紅花染め。

そんな紅花染めを研究者と共に再興させ機屋さんです。

紅餅という紅花の花びらを発酵させた後に
直径5cmぐらいの煎餅状にしたものを用いた
昔と変わらぬ天然原料による染色にこだわっています。

昭和35年からは、手織機に加えて機械動力による力織機も導入して
さらなる発展に努めています。

米沢駅よりタクシーで約10分に位置し
ショップも併設された工房は見学もさせてもらえます。

毎年7月の紅花の収穫期には紅花染めのイベントも開催しているとのこと。

株式会社新田
ぜひ一度ホームページをチェックしてみてください。

下の地図(Google Map)を動かすと場所が確認できます。
(地図上のマカーをクリックすると詳細あり)

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