大久保信子さんのトークショーに行ってきました!年齢別の着付けのヒミツや帯結びは?

「着物のスタイリスト」という着物業界で初めてのスタイリストとして、雑誌やTVなどから引っ張りだこの大久保信子さんのトークショーに行ってきました。
 
 
着付け師でもある大久保信子さんのトークショーは

「今よりマイナス5キロの着付けの極意」

という、中年の私なんかはとっても気になる内容です。
 
 
モデルや女優さんという「見せる」ことに関して妥協を許さない、プロの方々の着付けを長年担当している大久保信子さん。
 
5ミリ単位にこだわる着付けの極意は、そんなプロの方々に従事してきた大久保信子さんだからこそわかるヒミツでした。
 
 
今回はそんな大久保信子さんのトークショーの内容や、プロフィールや本なども紹介したいと思います。
 
 

大久保信子さんの着付けのヒミツ

今回の大久保信子さんの「今よりマイナス5キロの着付けの極意」は下の5つの点に絞った着付けのヒミツでした。
 
 

  • 補正の仕方
  • 衿合わせ
  • 帯の位置
  • 帯揚げの締め方
  • 帯締めの締め方

 

大久保信子さんがきもの雑誌「七緒」の着付けを担当して二年ほどたった時に、多くの方の要望から考案した着付けの仕方だそうです。

「人の身体は100人が100様、人それぞれの悩みがある」
 
それを着物の着方で解決して、いかにスマートに美しく見えるかを考えた着方です。
 
 
幼少期から業界に精通してきた環境で過ごし、多くの方の着付けを担当してきた方だからこそ分かる着付けのヒミツを紹介します。
 
 

大久保信子さんの補正の仕方

誰もが着付けで一番初めに行う補正のお話をされたときに、会場から

「へェ~!」

「ほんとですか?」

と声が上がるほど、補正の話で衝撃だったのが補正はいりませんというお話です。
 
 
このサイトでも着物の着付けで美しい着姿を保つために大切な事は、

「補正をしっかりすることです!」

と何度も紹介してる身としても、ビックリなお話に釘付けになりました。
 
 
しかしそれは、「補正をしない」ということではなく、あるものを上手に使い余分なものは足さないということでした。

腰紐や伊達締めの締める位置や紐の結び目、そして自分についてるお肉、それら全てを補正としてフル活用するそうです。
 
 
着付けの仕方でお肉を移動して自分の体型を生かすことで、自然で美しい着姿を作るということ。

市販の補正は身体のお肉ではないので、歩いたり動いたりすると崩れてきてしまうからだそうです。
 
 
確かに、補正のために使う腰パットは動くとズレるし、夏場は暑くて付けるのもおっくうな時もあります。

無くてもきれいに着付けられるのなら、それにこしたことはありません。
 
 
お腹が出てる人は帯をお腹が隠れる位置に持ってくるために、それに合わせた位置でお肉を移動させて腰紐や伊達締めを巻く。
 
 
そういうことを意識しながら着付けに使う最低限の小物で、補正をしながらスマートで美しい下地を作るということです。
 
 
とは言っても胸が大きくてうまく着付けることができない人は、下のような昔からある綿のさらしがおすすめとおっしゃっていました。
 

 
 
現代は美しい着姿を保つための補正の道具は沢山あるけれど、結局は昔からの着付けの方法が一番美しい着姿になるのですね。
 
補正ブラや腰パットなど様々な補正道具を使って、着付けを習ってきた私としては、衝撃的な話でしたがとても興味深い内容でした。
 
 

大久保信子さんの衿合わせの仕方

衿合わせの仕方は下の記事でも紹介している通り、体型や年齢に合わせた衿合わせを意識して行うことです。
 


 
 
下のように様々な違いにより、衿の合わせ方も変わってくるということですね。

  • ふくよかな人、痩せてる人
  • 若い人、年配の人
  • 首が長い人、首が短い人
  • 礼装用の着物、普段着用の着物

 
 
自分が一番スマートに美しく見える衿合わせを、常に研究しながら自分だけの着付けのテクニックを見つけなければです。
 
 

大久保信子さんの帯の位置の決め方

美しくスマートな着姿になるための帯の位置は、大きく分けて下の3つのポイントを意識して着付けることだそうです。
 

  • 年齢による体型の違いから帯の位置を考える
  • 隠したい体の肉は帯で移動させてる
  • 垂れ(たれ)の位置をもう5ミリ下げる

 
年齢の違いの帯の位置は、私も着付けの先生に教えて頂いたことがあったので知っていましたが、残りの2つは目からうろこの技でした。
 
 
モデルさんを用意して実践で教えて頂いた技は、まさに

「今よりマイナス5キロの着付け」

で、今すぐ取り入れたい内容なので詳しく紹介したいと思います。
 

年齢による体型の違いから帯の位置を考える

まずは、年齢による体型の違いによって変える帯の位置は、下のように体の変化に合わせて決めると良いです。

①若くて体型にも張りがある人・・・・お尻も胸も引き締まって高い位置にあるので、帯の位置もそれに合わせて自然と高い位置にします。
 
②年と共に体型がたるみお尻も胸も下がってきた人・・・・それに合わせて自然と帯も低い位置にします。

 
 
若いのに「粋」を求めてあえて帯の位置を低くしたり、身体がたるんでいるのに帯を高い位置に締めたら逆に不自然な着姿になってしまうということですね。
 

下の記事でも自分の体形や年齢に合わせた、自然な位置での帯結びの仕方を紹介しています。
 
実際の着付けの仕方は衿合わせの方法から変わってくるので、合わせて読んでおくと参考になると思います。


 
そして大久保信子さんいわく「粋」というのは60歳を過ぎてからなせるものだそうです。
 
「だから皆さん、着物を楽しめるのはまだまだこれからですよ!」

と60歳を超えられた方が笑顔でおっしゃられるので、益々これからの着物ライフが楽しく感じられました。
 

隠したい体の肉は帯で移動させてる

帯で上手に体型の欠点をカバーしながら着付けることがスマートで美しい着付けのヒミツだそうです。
 
年齢と共に身体のお肉が下に垂れてお腹が出てきてしまったり、お尻が下がってきたりします。
 
 
特にお腹周りは年齢と共に悩みの種になりますが、腰ひもや伊達締めでお腹のお肉を締めあげて移動させて着付けると良いそうです。
 
そして移動させたお肉をさらにその上から帯で固定することで、

「欠点をカバーしながら、着方で美に変える」

今よりマイナス5キロの着姿ができます。
 

「なぜだかわからないけどあの人、素敵な着姿!」

と思う人は、無理に補正で体を作って着付けをするのではなくて、自分の身体に合った自然な着付けをしている人ですね。
 

垂れ(たれ)の位置をもう5ミリ下げるひと手間

「お太鼓は着姿の顔」

と言われるように、いかに後ろ姿をきれいに見せるかで着姿の美しさが変わってくるそうです。
 
私もお尻が大きいくて低い位置にあるので、常に後ろ姿を気にして着付けをしていたので

「うんうん」

とうなずける内容でした。
 
 
洋服のジーパンなどはお尻の形や位置が隠しようがないですが、帯の位置一つでカバーすることができるのが着物にはまった1つでもありました。
 
しかし、大久保信子さんに教えて頂いたカバーの仕方が目からうろこの着付けのヒミツでした。

そのヒミツとは、下の画像の赤い線の垂れ線と言われる部分をお尻の一番高い位置に持ってくることで、お尻が見事に隠れてしまうというもの。

大久保信子さんの帯の位置

着付けをした後にもう5ミリたれを下げるだけで、お尻がどこにあるかわからなくなり、後ろ姿がスマートに見えるのです。

実際のモデルさんを使い実践してくれたのですが、お尻が強調されない分肩から裾まで一直線で繋がり足長効果が見られました。
 
大久保信子先生の帯の直し方
 
 
たれを下に動かすだけならだれでも簡単にできることなので、着付けの際すぐにでも実践したいヒミツですね。
 
以上が、帯結びに関しての着付けのヒミツでしたが、それに合わせて帯揚げや帯締めの締め方によっても美しく見えるヒミツを教えて頂けました。

まずは、帯揚げの締め方について教えて頂いたことを紹介します。

大久保信子さんの帯揚げの締め方

帯揚げを美しく見せるヒミツは、帯から見える帯揚げの幅と見せ方にありました。
 
まずは、帯から見える帯揚げの幅は下のようにすると美しいバランスの取れた着姿になります。

若い子・・・比較的多く帯揚げを見せる
年を重ねるにつれ・・・・帯揚げの幅を細く見せる

 
実際に下のように成人式などで着る振袖の帯揚げの幅は、とても多く見えていますね。

 
反対に、年齢が上がるほど帯揚げは帯から少ししか見えない幅で締められているのがわかりますね。
大久保先生
(大久保信子先生)
 
説明はなかったのですが、この2つの違いも年齢による体のつくりの変化によって、大久保信子さんが独自に見つけた美しく見えるヒミツなのでしょうね。
 
 
帯揚げにはもう1つ美しく見える結び方のヒミツを教えてくれました。

下の画像のように横から見た時に帯揚げが枕から一直線につなげて結ぶと、動きが無く見えてしまいます。

大久保信子さんの帯締めの位置

しかし、帯揚げを途中で帯の中にしまい動きを付けると何となく美しく見えるということです。

大久保先生の帯揚げ
 
実際に着物雑誌の「美しいキモノ」や「きものSalon」などの帯揚げを見ていても大久保信子さんが言うような締め方になっていますね。

帯揚げの美しい見せ方大久保信子さん
 
 
帯揚げの美しい見せ方
 
 
好みの問題もあると思いますが、見た目には曲線ができて女らしさが増すような気がします。

大久保信子さんの帯締めの結び方

帯揚げを美しく締めるヒミツをマスターしたところで、最後は帯締めです。
 
 
一本の紐を結ぶだけですが、その見せ方一つで着姿全体のバランスを担う大きな役割がありました。
 
私も着付けの先生に帯締めは着姿で一番目に付く場所なので、特に気にするようにと教わったことがあります。
 
プロの方からするといかに帯締めの存在が大切なのかが分かりますね。

そんな帯締めで注意したい点は締める角度で、下の画像のように実践しながら教えて頂きました。

大久保信子さんのトーク衿合わせ

その角度とは、帯締めが後ろに行くほど少し上がっていると、凛として美しい着姿になるということです。
 
これは、着物の着姿で美しい帯の角度が下のように「後ろ上がり」ということと、一緒の考えですね。
 
大久保先生帯の位置
 
若い頃はお尻の位置も高く張りもあるため、着付けで意識しなくても自然と上の画像のような着姿になります。

しかし、年を重ねるほど全てが下に下にと下がってくるので、着付けの仕方で全体を上がっているように見せることで、若々しくスマートな着姿になるのですね。

 
以上が、今回の大久保信子さんに教えて頂いた今よりマイナス5キロの着付けのヒミツでした。

どのヒミツも特別難しい技術がいるわけでもなく、自分の身体を上手に使いちょっと意識をして着付けをするだけで実現する内容でしたね。

女性はいつまでも美しく若々しくいたいと思うことは、着物が好きな人は特に感じることではないでしょうか。

しかし、その美しさは自分自身に向き合い自然になすもので、取ってつけたように作るものではないということを教えて頂きました。

トークショーの始まりで

「同じ形をしている着物は、ご自分で美しく見えるように形作っていくもの」

とおっしゃっていた意味が最後に分かったように感じます。
 
 
1人1人違う年齢や体型で誰一人として同じ着付けは存在しなくて、自分に合った着付けを自分自身で探していくもの。

そのためにはまず自分の体を知り、自分の体を生かす方法を模索することから始めなければいけませんね。
 
 
トークショーが終わっても、参加者の質問にひとつずつ丁寧にこたえてくれた大久保信子さんの姿勢からは、着物への愛情と美への探求心が垣間見れたように感じました。

そんな姿を拝見するうちに、大久保信子さんについてもっと知りたくなった私は、ここにたどり着くまでのプロフィールなどを調べてみましたので紹介します。
 
 

大久保信子さんの教室やプロフィールは?

現在、TVや雑誌に引っ張りだこの大久保信子さんはどのように着物に関わってきたのか気になりますね。

1人1人の個性に合わせた着付けと、美についての探求心を培われたプロフィールを紹介したいと思います。
 

  • 大久保信子さんは東京都の日本橋で三代続いた繊維卸商の家に生まれる。
  • 幼少期から歌舞伎鑑賞、日本舞踊の稽古などを通じて、 きものの知識と美学を身につける。
  • お茶の水女子大学附属高等学校、学習院女子短期大学(現・学習院女子大学)英米文学科卒。
  • 着付け講師を経て、1976年きもの雑誌の制作に携わった際、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。
  • 以後、きものスタイリスト、着付け師として独立してテレビやCM、舞台、雑誌などで活躍中。
  • 歌舞伎などの伝統文化にも精通し、江戸文化研究家としても知られる。

 
現在は、NHKカルチャーなどで着付け講座を開いていたり今回のように呉服屋やイベントのスペシャルゲストとして全国各地で着付けをレクシャーしてくれています。
 
 
どの講座も受付開始からすぐに満席になってしまうほど、プレミアムな講座です。

私がたまたま見つけた今回のトークショーも、早い段階で予約ができたので参加できたのですが、すぐに満席になっていました。
 
 
様々な場所でご活躍されている先生だけに、人気の高さが伺えますね。
 
このような状態から、大久保信子さんに直接レクチャーを受けるのは難しくても、出版されている本から着付けのヒミツを学ぶことができます。
 
 
最後に、大久保信子さんが関わっている本を紹介したいと思います。

大久保信子さんの着物の本

長年にわたり着物業界の第一線でご活躍された大久保信子さんは、これまで多くの本を出されています。

今回はその中でも、特に着付けに関わる本を6冊紹介したいと思います。

①手ほどき七緒 大久保信子さんのきもの読本/大久保信子さん監修/ プレジデント社 出版

「その人らしさ」を十二分に引き出す着つけのコツや、きもの選びのヒントや手入れや収納まで内容盛りだくさん。

着物を気軽に楽しむためのヒントが、たっぷりと詰まった永久保存版の一冊です。
 

 
本体1,944円
 
 

②人に着せる着付けと帯結び 大久保信子さんに教わる/大久保信子さん監修/ 世界文化社 出版

40年にわたる現場の経験に裏づけされたプロの技を、初公開。

着る人の魅力を引き出すポイント、撮影の現場で使う秘密のアイテムなどすべて写真で解説しています。

礼装から普段着まで、大久保信子さんの着付け技の集大成といえる一冊です。
 

 
本体2,376円

③手ほどき七緒 大久保信子さんの「着つけ」入門/大久保信子さん監修/ プレジデント社 出版

着やすさが一気にUPする、すいすいきれいに着付けることができる基本の「着つけ」を紹介してくれています。

スラリもかなえる「着つけ」お悩み相談室では、みんなの困った着つけの悩みに大久保信子さんがズバリ解決。


本体1,620円
 
 

④ひとりで着られる着付けの教科書―大久保流粋でかわいい着物のきかた /大久保信子さん監修/ 新星出版社 出版

 
「きれい」「気持ちがいい」「着崩れしない」大久保流、着付けの方法をていねいに解説!

着物のきかた半幅帯・名古屋帯・袋帯の結び方、これ1冊あれば一人ですてきに着物を着ておでかけできます。
 

本体1,620円
 
 

⑤大人の素敵なお出かけ着物 (大久保信子さんの着こなし指南) /大久保信子さん監修/ 世界文化社 出版

気軽に着物でお出かけしたい大人のきもの初心者のための、素敵な着こなしと着付けのお手本。

本体1,620円

⑥着物でおでかけ安心帖-美しい着つけとコーディネート /大久保信子さん監修/ 池田書店 出版

 
大久保信子さんが教える着つけと帯結びを写真で詳しく解説。

きれいに着るためのコツとワザに加えて、行き先、季節にあわせたふさわしい着こなしも紹介されています。

本体2,052円

以上が大久保信子さんが監修した本の紹介でした。
 
 
今回のトークショーで、最後の最後まで参加者の質問やお話に真摯に向き合ってくれる姿勢から、多くの方から支持される理由を見出せたような気がしました。
 
着物を着たいと思う理由は人それぞれですが、

「きれいに着たい」

「美しく見せたい」

という外見の美しさを整えることで、内面も一緒に磨かれた女性を目指しているのではないでしょうか。

美しい着付けができるようになり、大久保信子先生のような凛とした気高さと、優しさ、しなやかさがある女性になりたいものですね。