着物の襟(衿)合わせきれいに着付けるコツ

着付けをする上で特に気になる所が、襟(衿) の合わせ方ではないでしょうか?

「襟」と「衿」の使われ方の違いですが、一般的には「襟」と書き、和装では「衿」と書くことが多いので、以降は衿で統一しますね。

 

左右の衿の幅が違っていたり、角度や衣紋が抜けていなかったりと、悩みは人それぞれ沢山ありますね。

逆に衿合わせがきれいに決まっていると、着姿がとてもきれいに見えます。

今回はそんな衿合わせを、きれいに着付けるコツと、出先での簡単な着崩れの直し方をご紹介したいと思います

きれいな衿のポイント

衿合わせをきれいに決める為には、

「どの形の衿がきれいなのか?」

のポイントを知らなければきれいに着付ける事ができません。

きれいな衿合わせのポイントは

・左右の衿の角度が対象
・年齢別、体型別、衿の深さ
・衿の立ち具合
・衿浮きの押さえ
・衣紋の抜き加減

 
等になり、ポイントをしっかり意識して着付けをすれば、衿合わせがきれいに見えるようになります。

では、実際にどのように着ていけば良いのか上記のポイントに添って、細かく説明していきます。

きれいな衿の着方

衿合わせがきれいにできているか?いないか?は着付けの美しさを大きく左右する重要なポイントになります。

しっかりポイントを抑えてきれいな着付けが、できるようにしましょう。

左右の衿の角度が対象

衿のきれいな角度とは、「半衿の出し加減」によって決まります。
きれいな角度とは赤い線の半衿の出し幅が左右対称の幅によって作られた角度です。
左右の衿の角度が左右対象""

左右がバラバラの出し幅だと衿合わせの角度が左右どちらかにかたより、見るからに違和感をおぼえます。

きれいな角度を作るためには、まず長襦袢の角度から作っていきましょう。
 
 
初めに赤丸の部分の角度を意識して長襦袢の着付けをします。

長襦袢の角度
(半衿の付け方の適当さは無視して下さい^^; 撮影に使うなら、丁寧に付ければ良かったと後悔中です)
 
この角度は後で紹介する、年齢や体型にもよりますが、角度に合わせて左右対称になるように着付けます。
 
 
きれいな角度を作るための着付けの方法は、赤い線の部分をバストの一番高い部分(赤丸)に合わせる様に意識すると良いと言われています。
角度に合わせて左右対称になるように着付け

ご自分の体型によっても変わってきますので、あまり神経質にならずに体型を見ながら調節すれば大丈夫です。

 
 
次は着物も合わせた衿の角度を見ていきます。
着物を着た時の衿合わせでの角度のポイントは

「半衿の出し加減」

になり、着物を着たときの衿の合わせ方の角度で、赤い線の部分が重要になります。

赤い線の幅(半衿の出し幅)が、1.5cm~2.0cmになるように衿の角度や幅を合わせるのが理想とされています。

着物も合わせた衿の角度

こちらも年齢や体型に合わせて衿を深く作る時などは多少前後しても大丈夫です。

右、左共にこの幅を対象に作ることで、きれいな衿合わせができますが、慣れないうちはきれいな角度を作るのが難しいので、頑張って練習してみて下さい。

年齢別、体型別、衿の深さ


衿の深さとは衿元の深さの事で、自分の年齢や体型に合った衿の深さに調節することできれいな衿合わせを作ることができます。

年齢や体形別の衿の深さの違いは下記の4点になります。
 
①若い人の衿合わせの深さ
②年配の衿合わせの深さ
③ふくよかな体型の衿の深さ
④ほっそりした体型の衿の深さ
 
まずは若い人、年配の人に分けた衿の深さの違いを見ていきましょう。
 
年齢の違いの見分け方は、舞妓さんと芸者さんの衿合わせ(赤い丸の部分の衿元)の深さを見ると良く分かります。
着物も合わせた衿の角度

 

① 若い人の衿合わせの深さ

20歳ごろまでしかできないと言われている舞妓さんの衿合わせの深さは喉仏(のどぼとけ)が隠れるほど深く(高く)衿合わせをします。

舞妓さんの衿合わせの深さ

一般の成人式などの振り袖でも同じ様に深い衿合わせをしていますね。
(半衿の出し幅を舞妓さんは多めに作りますが一般的には1.5cm~2.0cmが理想です)

② 年配の衿合わせの深さ

年齢層が高い芸者さんは衿合わせの位置がとても浅く(低く)、喉仏からかなり離れた位置にあり、とても抜けている感じで着ているのが分かりますね。

年齢層が高い芸者

一般に着物を着る時にもこの様な年齢にあった着付けをしますが、なぜその様な衿合わせなのかと言うと、長襦袢の衿合わせの時に

「バストの一番高い位置(バストトップ)に合わせて衿の角度をつけると良い」
バストの一番高い位置(バストトップ)に合わせて衿の角度

と説明しましたが年齢を追うごとに体型も変わって行き、バストトップが下がっていきます

それに合わせて着付けをすると年齢を追うごとに自然に衿が浅く合わさってしまうからです。

実際に見ても衿合わせが深い若い人の着姿は可愛らしく、浅くなれば粋(かっこいい)な印象を受けますよね。

若い時は衿合わせの位置が高くなると共に、帯の位置も高くなっているほうが可愛く若々しさの特徴を活かした着付けになります。

歳を重ねるごとに衿合わせの位置も下がっていき帯の位置も下がっていきます。

着物上級者の

「この人なんか着慣れてる」

と思える人は、年齢問わず、衿と帯のバランスがちゃんと自身の体型にあっている人です

若いのにあえて「粋」に見せる為に衿合わせを深くしたり、年配なのに帯の位置が高かったりすると、とてもアンバランスで逆におかしくなります。

大きな布(着物)を一枚巻いて帯で結ぶだけの着物は、洋服と違い自分の体型がそのまま着姿に反映してしまいます。

若さの特権であるハリのある体型をうまく利用するのも、年齢と共に全体が下がってきた体型をうまく隠すためにも

「自分の年齢に合わせた着付けをする」ことで年齢にあったきれいな衿合わせができますね。
年齢にあったきれいな衿合

年齢別の他に、体型によっても衿の深さを変えることで衿合わせをきれいに見せるポイントがあります。
 
次はふくよかな体型の方とほっそりした体型の方に分けた衿合わせの仕方を見ていきましょう。

③ ふくよかな体型の衿の深さ

ふくよかな体型の人は、首が太く見えがちなので衿合わせを浅くする方が全体のバランスがとれてきれいです。
ふくよかな体型の衿合わせ

 
 

衿合わせの幅(半衿の出し加減)は、首の短い人は少なめに、長い人は多めに加減するとよいでしょう。
衿合わせの幅(半衿の出し加減)

④ ほっそりした体型の衿の深さ

首が細い為、衿元が貧相に見えてしまうほっそりとした体型の人は、深い角度でふっくらと合わせるようにします。
 
衿合わせの幅(半衿の出し加減)は少し多めに出す事で胸元にボリュームが出てきれいに見えます。

衿の立ち具合

衿の幅や角度、深さだけではなく、衿の立ち具合でも見え方が変わってきます。

衿の立ち具合
衿の立ち加減も、衿合わせをきれいに見せたり、自分の体型をカバーする為の大切なポイントになります。
 
 
衿が立つと首が短く見え、衣紋(えりの後ろ)がぬけなくなり、洋服のカッターシャツを着ているみたいに、初心者ぽく見えてしまいます。
衣紋(えりの後ろ)がぬけな

着物は程よい衣紋の抜き加減が着姿がきれいに見えるポイントなので、衿は立ちすぎない様に気をつけましょう。

初心者の方は衿が立ち気味になりますので、どうしても寝せれない場合は衿芯の素材が原因の場合があります。

プラスチックの衿芯を使っている場合は三河芯や、手作りの厚紙で作った衿芯など使ってみるのも一つのコツになります。

逆に衿が寝すぎると首が強調されすぎて着物の着姿としてはアンバランスにみえてしまいます。

着付け初心者の頃は、自分の体型にピッタリの衿の立ち加減を見つけるのは大変ですが、鏡で全身を見て、一番体型がきれいに見える立ち加減を見つけてくださいね。

衿浮きの押さえ

衿の浮きとは、衿合わせ全体が、身体から浮いてしまっている状態のこと。

衿合わせ全体が、身体から浮いてしまっている状態
中から肌襦袢が見えたりすると、とてもみっともないので衿の浮きが出ないように着付けの際は気をつけて下さい。

衿の浮きの原因も衿芯が硬いことで起こる場合があるので、柔らかい芯など自分に合う衿芯を探してみて下さい。

衣紋(えもん)の抜き加減

今回は前衿の合わせ方から紹介しましたが、本来ならば着付けの際に一番始めに合わせる衣紋の抜き加減です。
衣紋とは赤の丸で囲んだ部分になります。
衣紋(えもん)の抜き加減

衣紋の抜き(空き)加減は、着ていく着物の種類や、髪型によって印象が変わりきれいに見えます。

衣紋を少し多めに抜く(あける)場合
衣紋を少し多めに抜く(あけて)

・振り袖、訪問着等、華やかなイメージの着物の場合
・髪型が首の辺りにかぶる場合
・気温が暑い場合

 
等の場合に合わせて、少し衣紋を抜き気味に着付けると、それぞれのTPOに合いきれいに見えます。
 

反対に衣紋を詰めて着付ける場合は
反対に衣紋を詰めて着付ける場合

・紬などの普段着着物の場合
・髪型が、高めにまとめてある場合
・気温が寒い時

などがあります。
 
 
季節に合わせて衣紋の加減を調節すると、体温調節にもなりますし、見ている方も違和感なくきれいに見えます。

実際の着付けの際の衣紋の抜き方は、「衣紋抜き」という衣紋を抜く専用の布を使うときれいに抜けます。

下の写真が「衣文抜き」になります。

 

長襦袢の衣紋の部分に縫い付けて、取り付けた衣紋抜きを下から引っ張るだけで、きれいな衣紋が抜けるようになるアイテムです。

衣紋抜きに付いている赤い丸の部分の穴に腰紐を通しておくと衣紋が上がってこない構造になっています。
きれいな衣紋が抜ける
 
長襦袢を仕立てる際には大抵の呉服屋さんは衣紋抜きを付けた状態で仕立ててくれます。

衣紋抜きが付いていない長襦袢でも、自分で着ながら調節できるので、きれいな衣紋の抜きにしてくださいね。
 
 
以上がきれいな衿の着方の紹介でした。

きれいな衿合わせは長襦袢で決まりますので長襦袢を着る段階で、衿合わせをしっかりできるようにしておくと良いですね。

しかし、どんなにポイントを抑えて着付けをしていても、時間が経つとやはり着崩れを起こし衿合わせも崩れてきてしまいます。

そんな時に出先でも「ササッと直せる」着崩れの直し方を紹介します。

出先での着崩れの直し方

歩いたり座ったりしていると、それに合わせて着物も動くので、どんなに注意していても着崩れはおきます。

左右の衿合わせがズレてきたり
出先での着崩れの直し方

 
 
衿が浮いてきたり
衿が浮いてきたり

 
 
半衿が波を打ってきたり。
衿が浮いてきたり
 
着崩れの種類も様々ですが、どんな着崩れも着物を着たまま一回できれいに直せてしまう裏技を紹介します。

まずは右の長襦袢の衿合わせから直していきます。

長襦袢の右の衿の先を左側の着物をたくし上げて見つけます。

(赤い丸で囲った所)見つけた丸の部分を矢印がなぞっている部分を矢印の方へ引っ張ります。

その時に右衿の根元をしっかりと抑えていないと、逆に気崩れてしまいます。
長襦袢の右の衿の先を左側の着物をたくし上げ
 
 

写真の様に右手で右の着物の衿と長襦袢の半衿をしっかり抑えます
先ほどの長襦袢の赤い丸の部分から赤い線の部分をしっかり伸ばすイメージで引っ張ります
着物の衿と長襦袢の半衿をしっかり抑えます

 
 
次に左の衿も同じ様に直します。
長襦袢の左衿の衿先を(赤い丸の部分)を着物をたくし上げて見つけます。(画像は長襦袢しか着ていませんが実際には着物も着ている状態です)
衿元を抑えながら下に引っ張ります。
左の衿も同じ様に直します
 
 
あとは着物の衿を同じ要領で左右均等に整えて前の衿直しは終わりです。
衿元を抑えながら下に引っ張ります

 
 

次は後ろの衣紋の抜きを直して行きます。

後ろの衣紋は時間が経つと詰まってくるので、元の抜き加減に戻していきます。
 
後ろの帯下お尻の部分の着物をたくし上げると、長襦袢に付いている衣紋抜き(丸の部分)が出てきます。
 
出てきた衣紋抜きを下の方に引き下げて衣紋の抜きを作ります
 
衣紋抜きが付いていない長襦袢は、長襦袢をそのまま下に引き下げればきれいに衣紋が抜けます。

後ろの衣紋の抜きを直して行きます

 
 

今回は一般的にきれいな抜き加減とされている拳(こぶし)一個分の衣紋を抜きます。(この画像も本来は着物をきています)
長襦袢をそのまま下に引き下げればきれいに衣紋が抜けます。
 
 

次に帯上の背中の部分(着物)のたるみを取ります。
丸の部分のたるみを取りきれいに整える方法です。
背中の部分(着物)のたるみを取ります
 
 

まず、帯の下の部分(垂れ先)をめくり着物のおはしよりの一番上の布だけをつまみます。
矢印の様におはしより全体を下に引っ張ります。
帯の下の部分(垂れ先)をめくり着物

 
 

後は、丸の部分から手を後ろに回し、矢印の方向に布を引っ張り整えます。
おはしより全体を下に引っ張ります

 
 

以上で着崩れの直しは終わりです。

できあがった衿合わせできれいに見えるポイントは
衿合わせの幅、角度が左右対称。
衿合わせできれいに見えるポイント衿合わせの幅、角度が左右対称。

 
 
横から見た時も衿が身体にピッタリとくっついて、着物と半衿の折山の筋が真っ直ぐ通っている。

衿合わせの幅、角度が左右対称

 
 
衣紋がきれいに抜けている。

衣紋がきれいに抜けている。

衣紋がきれいな角度、帯上の着物にたるみ、シワがない。
衣紋がきれいに抜けている。

になります。
 
 
出先での着物を着たままの着崩れの直し方は、着物をたくし上げたり帯をめくったりなど、人前では恥ずかしい格好になるので、お手洗いなどでこっそり直すと良いですね。
 
 
以上が、着物の衿の合わせ方!きれいに着付けるコツときくずれの直し方でした。

人の目線で一番目につく衿元が、きれいに決まっているだけで、

「できる人」

を印象づけることができ、着物の着姿でとても大切な場所です。

今回の記事を参考に自分の体型に合ったきれいな合わせにチャレンジしてみてくださいね。