平安時代の中期ごろにはすでに衣類や調度品
武具などにつけられていたと言われている紋。
現代でも着物を着る際は、出向く先の格式に合わせて
黒留袖や訪問着などに紋を付けるしきたりが受継がれています。
着物の紋には様々な種類と格付けがあり、
着物の種類によって入れ方が変わってきます。
着物の場合は、着物の「種類」「文様」「紋の数」「帯との組み合わせ」など様々な違いで格が変わってきます。
入れる位置にも
ただ家紋を入れる決まりだけでは無く
先祖との深い意味を知ることで、
あなたも紋を大切に取り入れたくなりますよ。
今回はそんな着物に付ける紋の種類や入れ方を紹介したいと思います。
着物の紋の格と種類
着物に付ける紋には様々な種類や格付けがあります。
現代は紋に関してもだいぶ寛容にとらえられるようになってきましたが、
- 黒留袖や喪服などを着る場面の冠婚葬祭
- 格式の高い改まった席
などでは、まだまだ基本となる紋を付けて出席します。
紋の種類
紋の種類は技法と図柄の表現形式の2つ要素で成り立っています。
表現形式・・・
紋の格
紋の格は、技法と表現形式にそれぞれに存在します。
■技法でみる格は
染めの紋は白く染め抜く「
色で描く「色紋」と刺繍による「縫紋」は略式の格です。
※縫紋には菅縫(すがぬい)・相良縫(さがらぬい)など多彩な刺繍の種類があります。
■表現形式でみる格は
ついで、「中陰紋」「陰紋」の順になります。
最も格の高い「染め抜き日向紋」は礼装には必ず付けます。
着物の種類別紋の付け方
紋は、黒留袖や色無地など着物の種類によって付け方が変わってきます。
また、紋の種類や付ける位置によっても格が変わってきますので
出向く先の格に合わせた紋を付ける必要があリます。
今回は、下の着物の種類に分けて紋の付け方を紹介しますね。
- 黒留袖
- 喪服
- 色留袖
- 訪問着
- 色無地・江戸小紋
- 紬の紋
付ける位置と名前は下の画像を参考に読み進めてください。
背縫いに背紋を入れると一つ紋。
両後ろ袖に袖紋を加えると三つ紋。
両胸に抱き紋(胸紋)を入れると五つ紋となります。
■紋を付ける位置(大人用の男女の着物)
背紋下がり・・・・衿付けから約6cm
袖紋下がり ・・・・ 袖山から約7.5cm
抱き(前)紋下がり・・・・肩山から約15cm
①黒留袖の紋の付け方
既婚女性の第一礼装である黒留袖は、 礼装の中でも最も格の高い装いのこと
黒留袖とはなんぞや?から初めたいあなたは、下の記事からどうぞ
黒留袖は背紋・袖紋・抱き紋の全てを付ける5つ紋を必ず付けてミセスの第一礼装を表します。
②喪服の紋の付け方
喪服は弔事(ちょうじ)の第一礼装ですから、
不祝儀でも陰紋は付けません。
不吉な出来事。特に葬式。(祝儀=婚礼等)
③色留袖の紋の付け方
色留袖は付ける紋によって格が変わってきます。
染め抜き日向3つ紋・・・・準礼装の格
染め抜き日向1つ紋・・・・準礼装より少し軽めの格
※三つ紋以上は比翼仕立てが一般的
2枚の着物を重ねて着ているように見せるために、着物の袖口・振り・衿・裾回し部分だけを二重に仕立てること。人形仕立てともいう[4]。
より気軽に装いたい場合は、中陰紋・陰紋・縫紋などを付けることもできます。
④訪問着の紋の付け方
社交の場で最も出番の多い訪問着は、色留袖と同じで付ける紋によって格が変わってきます。
中陰紋・陰紋・・・準礼装
染め紋・縫紋・・・準礼装より軽めの格
訪問着の柄ゆきや豪華さで紋の種類を決めるとされています。
最近は使用用途を広げるために、訪問着に紋を付けない人も多く見られます。
そのことからも、
「訪問着には必ず紋を付けなければならない」
ということはありません。
訪問着の詳しい使い方や、他の種類の着物との違いを知りたいあなたは下の記事からどうぞ
⑤色無地・江戸小紋の紋の付け方
色無地は柄がないため、紋の付け方で格が変わる重要な意味を持ちます。
染め抜き日向1つ紋・・・略礼装
中陰紋・陰紋・・・準礼装・略礼装
縫い紋・・・略礼装
染め抜きからしゃれ紋まで様々な紋を付けることができ
紋による格の違いがはっきりと現れます。
現代では一般的に一つ紋とすることが多いです。
江戸小紋の紋の付け方
江戸小紋三役のような柄が細かく格の高いものは
「鮫」「角通し」「行儀」3種類の柄で、江戸小紋の中でも一番格の高い柄になります。
柄の大きいもの、おやしゃれ感の強いものには紋を付けることはしません。
江戸小紋の詳しい柄や格は下の記事からどうぞ
⑥紬の紋の付け方
紬は基本的におしゃれ着なので、紋を付けても格がある場面では着ることができません。
しかし最近は、紬にも絵羽模様の訪問着が多く見られ
このような紬には
無地の紬にも縫い紋を1つ付けることで
軽い茶会などに行くこともできます。
色々な種類の刺繍を使い
家紋ではなく草花などをあしらった伊達紋(だてもん)
古典的な紋様など自分な好きな物を
紋として愉しむのも良いですね。
家紋ではない紋のこと。
家紋のような決まりもなく、デザインも自由で文様や絵画に近く、おしゃれを目的としたもの。
紋の位置に託された先祖を思う意味
下の画像のように背紋・抱き紋・袖紋の3つの位置に紋は入れる決まりになっていますが、
この位置ごとに先祖を思う意味を持つのが
紋の面白いところでもあります。
紋の位置には
- 背紋の1つ紋はご先祖様
- 胸にある2つの抱き紋は両親
- 両袖後ろにある2つの袖紋は兄弟、姉妹、親戚
の意味が込められています。
それぞれの位置にそれぞれのご先祖様や親族を
一緒に纏うことで、共にその場にいるような
心強さを感じられますね。
以上が、着物の紋の種類と入れ方と意味でした。
私は正直、着物を初めた頃は
「紋を入れると着れる場所が制限される」
「今の時代はあまり入れない」
などの、現代の風潮に流され
着物の紋に関してあまり重要視していませんでした。
しかし、紋にはこんなにも多くの決まりや
ちゃんとした意味を持つということを知ってからは
紋に対しての意識が大きく変わりました。
自分たちの都合や時代に合わせて色々なことがスマートに
シンプルになりつつある世の中ですが、
「大切なこと」
を履き違えたり、見失なわないようにしていきたいものです。