着物が自分で着れるようになり友達との会食も増え始めると
「食事での立ち居振る舞いや作法にも、気を配れる女性」
を目指したくなります。
着付け教室などで資料を見ながら習っても、いざお食事となった時は意外にできない物です。
というか、すっかり忘れてるてので
「実践でも取り入れられるようにならないと、意味が無い」
と思い、実際に着物を着て行われるお食事マナー講座に行ってきました。
今回は「日本料理」に特化した講座だったので、洋食と和食のルールやマナーの違いなど、基本からの講座です。
基本を知るうえでマナーやルールの元となる国際的な基準から教えて頂き、普段の生活の中にも取り入れられるお話ばかりでした。
着物を楽しむうえで、切っても切れないルールやマナーを習うことで、これからの心の在り方も大きく変わったように感じます。
そんな『着物食事する時のマナー講座』の内容を、今回は紹介したいと思います。
目次
国際基準のテーブルマナー「プロトコール」って?
今回のテーブルマナーを学ぶにあたって、まず最初に教えて頂いたのがプロトコールです。
プロトコールとは国際間のエチケットで、文化や価値観の違う格国の人が交流する時に、わだかまり無くことを進めるための決まりです。
一言でいうと世界基準のテーブルマナーの基本ということですね。
日本料理のマナーも、下の5つの原則から成り立つプロトコールを基準として考えて行きます。
- 序列に気を配る
- 右側上位
- 相互主義(返礼主義)
- 格国固有の習慣の尊重
- レディーファースト
世界共通の決まりを元にマナーを考えることで基本に沿った振る舞いができるようになるということですね。
この5つはどんな内容でどんな場面で使われているかを、もう少し詳しく紹介します。
プロトコールの「序列に気を配る」とは?
パーティーの配席であったり、スピーチの順番は序列を元に決めていく必要があります。
「来賓の中でも位が一番高い人からスピーチをお願いする」
など、序列に配慮することは相手に失礼にならないために、とても重要で配慮が必要なこととされています。
プロトコールの右側上位
序列を元に、主催者を基準として右側の人を上位とする原則です。
国際間の国旗掲揚や晩さん会などの席次、会談の際のゲストとホストの立ち位置までに関わってきます。
よく国際交流の際に下のような写真を目にしますが、右側上位の原則からすると、この場合は安倍首相がゲストとして呼ばれていることが分かりますね。
結婚式の新郎新婦の立ち方も、プロトコールの右側上位で日本だと男性が右ですね。
プロトコールの相互主義(返礼主義)
こちらは、日本人の感覚では自然にできるとても身近な原則で、
「何かをしてもらったら、お返しをしよう」
ということです。
お食事に招待されたら、今度は自分が招待しようという相手の儀礼に対して相応の儀礼を返すという原則ですね。
日本の内祝いのお返しなども、相互主義の形ですね。
プロトコールの格国固有の習慣の尊重
国によって、価値観や文化もそれぞれ違うので、プロトコールの原則も尊重しながら、時にはその国に合わせた行いをすることです。
日本のことわざの『郷に入っては郷に従え』ですね。
相手を尊重し受け入れることで、お互いに気持ちよい時間を過ごすことができます。
プロトコールのレディーファースト
レディーファーストは、だれでも知ってる女性を優先する行いのことですが、日本人にとっては一番難しいことでもあります。
そもそもプロトコールは西洋社交界の基準で、騎士道を元に作られたものです。
騎士道では
「男性は女性を大切にする」
という教えのため、西洋の方々はレディーファーストは当たり前に染みついている物。
しかし、日本は昔から武士道を元に文化が成り立っているので、
「女性は3歩下がって男性を立てる」
という教えが当たり前の国です。
今でこそ女性の人権が見直され、昔ほど男性有利な文化ではありませんが、男性も女性もレディーファーストになれていません。
そのため男性は女性優先に行動することが苦手で、女性も男性のやさしさを受け取ることが苦手とされています。
女性の私からしたらとても嬉しいマナーですが、素直に受け取る心も身につけなくてはいけませんね。
このようにプロトコールは様々な場面で使われていて、普段の生活の中でも取り入れていくことで、
「一つ上を行く心使い」
が身に付いた、女性になることができるということです。
そして、今回の日本料理のマナーもこのプロトコールを基準に成り立っています。
これから紹介する日本料理のマナーはさまざまありますが、そもそも「マナー」という言葉と一緒に使われる「ルール」は全く違う意味を持つと知っていますか?
普段何気なく使っている「ルール」と「マナー」の意味を知ると、日本料理だけでなく普段の生活面での考え方も分かるようになります。
そもそも「ルール」と「マナー」の違いって何?
着物の世界では特に耳にする「ルール」と「マナー」の違いは実に簡単。
マナー・・・・ルールを元に様々な背景に合わせて応用して取り入れるもの。決まりではない。
ということです。
私も当たり前のようにセットで使っていた言葉ですが、実は正反対の解釈とも言えますね。
今回のプロトコールを元に考えられるお食事のルールやマナーは、相手とわだかまりなく交流するための物です。
その場の雰囲気や格に合わせて
「この場合はルールを守ろう」
「この場合はマナーとして考えよう」
と使い分けると良いですね。
そして、食事だけでなく着物で当てはめて考えることもできます。
現代・・・・公人でない一般人の私たちが着る着物は、ファッションとしての要素が強いので、マナーとして考える傾向にある。(茶道や公式な場面(園遊会)などの場合は別)
そもそも、一般人の私たちが言われてきた
「結婚式には染め物の訪問着でなければならない」
「式典には紋が入っていないといけない」
などのルールは、洋服が日本にも取り入れられられるようになったころに着物業界が販促の一環として決めたルールです。
和服離れを懸念して
「この場面はこの着物でなければならない」
というルールを決めることで、場面に合わせた着物を購入しなければならないようにしたものです。
そんな着物の歴史を見ていくと、時代の流れによって「きもの」に対しての価値観も変化をしています。
マナーやルールを考える時は、
「相手への心つかい」
という基本を忘れないようにすれば、自分はどのようにすれば良いのか見えてきますね。
そんなことを踏まえて、今回の日本料理を着物で頂く時のルールとマナー講座の内容を紹介します。
着物での立ち居振る舞い
まず初めは料理をいただく前に、着物での立ち居振る舞いについて下の項目別に教えて頂きました。
- 美しい立ち方
- 美しい歩き方
- 腕を上げる時
- 物を拾う時
- 階段を上がる時
- 車の乗り降りをする時
- 美しい座り方
普段の着物生活にも取り入れることで、
「言葉を交わさなくても、なんとなく好感の持てる女性」
になることができますので、1つずつ紹介していきます。
美しい立ち方
- 肩の力を抜いて背筋を伸ばす。
- おへそを少し突き出すように意識する。
- 身体の中心に力を入れて内またぎみにする。
- 片足重心ではなく左右均等にする。
- 手は前で軽くそろえる。
美しい歩き方
- 背筋を伸ばし、小またで足をまっすぐ運ぶ(すり足、草履の一つ分の歩幅)
- 大きな音を立てないように注意する
- 着物がはだけないように、右手を上前に添える。
腕を上げる時
- 片方の袖口を押さえるようにする。
- 腕がむき出しにならないように意識する
物を拾う時
- 左手で上前を持ち上げて利き足を後ろに下げてしゃがみ、利き手で拾う
- 着物が傷むので、膝はなるべく付かない
- 袂(たもと)が床に付かないように気を付ける
階段を上がる時
- 右手で軽くたてずまを持ち上げる
- 身体の向きを少し斜めにすると歩きやすくなる
- 足首が見えないよに意識しながら歩く
車の乗り降りをする時
- 右手でたてずまを軽く持ち上げる
- お尻から入り腰を下ろす
- 両足を揃えてから離し、着物がはだけにように手で押さえながら身体を回転させて足を入れる
- ※降りる時は手順が逆
- 降りた後はお太鼓を整える
美しい座り方
- 帯がつぶれないように浅めに座る
- 両ひざとつま先はそろえる
- 食事の際は帯とテーブルの間をこぶし1つ分空けるように座る
- 袂(たもと)が料理に使にように気を付ける
以上の内容を普段から意識して行うことで、自然と
「所作がきれいな女性」
になることができるということです。
所作は生活の仕方や心の置き方など、その人の人格や在り方表れると言われています。
せっかく外見のきれい着物を着るのであれば、内面のきれいな大人の女性になりたいですね。
さて、ここまでのお話が終わってやっと本題の日本料理のマナー講座に入ります。
日本料理はどこに気を付けて食べればよいの?
今回の講座は実際に料理を食べながら、その都度気を付けたい下のマナーや作法を教えて頂きました。
- ナプキンとおしぼりの使い方
- 乾杯の仕方
- 箸の使い方
- 器の使い方
- 料理の召し上がり方
マナーは様々な背景を元に考えられた作法なので、その背景を知るとマナーを覚えやすいで。
ナプキンとおしぼりの使い方
おしぼり・・・・手をふくもの。口もと、テーブルは拭かない。
口元が汚れた時、私はおしぼりでふいていましたが作法ではナプキンでふくのですね。
後、グラスに付いた口紅はナプキンでは繊維が残るので拭いてはいけないそうです。
その場合は、親指でそっとなぞってふき取り、親指の汚れをナプキンでふき取るようにしましょう。
しかし男性の前で指でふき取る行為は、夜のお誘いを承諾したという意味もあるそうなので、使い方には注意が必要ですね。
乾杯の仕方
入れ物が傷ついたり、食器で音を立てるの良くないとされているからです。
そのため、入れ物を目の高さまで上げて乾杯を言葉で楽しむようにします。
車の移動がある場合やお酒が苦手で食前酒を飲めない場合は、香りだけでも楽しむようにすると相手にも思いが伝わります。
箸の使い方
お箸の使い方は食事の作法の中でも一番マナーが多いものとされているため様々な「禁じ箸」がありますが、今回は下の4つを紹介します。
- 箸留めの取り方
- お箸の持ち上げ方
- 器と箸の持ち方
- 箸の休ませ方
箸留めの取り方
箸には真ん中に巻き紙の「箸留め」がついています。
これを取ってから箸を使うのですが、
箸留めは、片方の箸を引くことで簡単に取れるので上品に行うようにしましょう。
取れた箸留めは、縁に寄せておくと中居さんが下げてくれます。
お箸の持ち上げ方
お箸を持つときも美しく見せるための作法があります。
①右手で上からお箸を持ち上げます
②右手でお箸を持ちながら左手で下から支えます。
③両手を箸から離すことなく、右手を滑らしながら下に移動します。
④左手を離して、右手で持ち上げの完成です。
器と箸の持ち方
和食は器を持って頂くのがマナーです。(平たい形のものは持ち上げない)
ただし、
①まず両手で器を持ち上げる。
↓
②左手で器を持ったまま右手で箸を取ります。
↓
③左手の小指で箸を支え、右手で箸を持ち替える。
器を持っていただく料理の場合は、まず両手で器を持ち上げてからお箸を持つのですね。
箸の休ませ方
箸の休ませ方でやりがちな下の方法は全てNGです。
- お茶わんやお皿に乗せる。
- 箸先だけ、お皿のフチに載せる。
- テーブルの上に直接置く。
日本料理の席では箸置きがあるので、必ず箸置きを使いましょう。
箸置きがない場合は、箸袋を箸置きになるように折るなどして使っても良いです。
折敷の場合は、食事中は折敷の左のフチに箸先をかけます。
食事が終わったら、箸袋で箸先を包んだり4つ折りの懐紙で箸先を包むなどして、中居さんが分かりやすいようにしておくと良いですね。
器の使い方
日本料理に使われている器は、漆器だったり物故(ぶっこ)物の作品だったりと、特に慎重に扱いたい貴重な物ばかりです。
蓋(ふた)が付いている椀物は漆器でできている場合が多いのですが、漆器や装飾がすれたりはがれたりしないようにします。
このような椀物の蓋は、食事中は逆さにして器の右上ぐらいに寄せておきます。
しかし、
出てきたまんまの姿で、蓋をしておきましょう。
ここまでが、料理を食べる前に気を付けたい作法です。
では、実際のお料理を食べながら日本料理の作法を紹介します。
料理の召し上がり方
今回のマナー講座で出たお料理は、普段より品数が少ない下の品でした。
- 食前酒
- 先付け
- 椀物
- お造り
- ご飯
- デザート
日本料理の基本の部分はそろっていたので順番に紹介します。
着物でお食事マナー食前酒
食前酒は18世紀の後半にイタリアから始まったもので、食欲を増進させたり会話のきっかけとしての役割があります。
そのため、出される料理に相性の良い種類だったり、季節のお酒だったりします。
今回は香りが上品な柚子酒だったので、飲む前の香りを楽しみました。
酒杯を目より上にあげて乾杯とします。
着物でお食事マナー先付け
先付けとは、「お通し」「座付き」「付き出し」などと言われる料理の一番初めに出されるものです。
お酒と共に出す酒の肴(さかな)もそのうちの1つですね。
今回の先付けは香りと甘みが上品な「胡麻豆腐」でした。
持ちやすい器なので、持ち上げて食べても大丈夫です。
着物でお食事マナー椀物
椀物は日本料理のメインで、唯一「一番出汁」を使用するお料理です。
椀物の良し悪しで、そのお店がわかるとも言われる大切な料理になります。
今回は、食材の触感も楽しめる海老真丈(しんじょう)でした。
器の取り扱いとお箸の持ち方に注意しながら、食材と出汁の香りを楽しみます。
着物でお食事マナーお造り
お造りの食べ方は気を配りたいところが多いです。
ワサビ | お醤油にとかずに香りと風味を楽しむためにお刺身に付けて頂きます。 |
大葉 | 殺菌・抗菌作用の効果があるため、一番先に食べると良いとされています。 大葉だけでは食べずらいので、お刺身に巻いて食べるのが良いですね。 |
紅だて(べにだて) | 紅色が料理を彩ることに加え、こちらも殺菌・抗菌作用があるといわれています。 さらに蓼(だて)は、胃薬として用いられていたこともあり、生ものと大変相性が良いのです。 蓼は葉や茎に特有の香りとピリッとした辛味を持っているので、わさびとは違った香りを楽しむのも良いでしょう。 |
ツマや添え物 | お刺身で巻いて触感を楽しんで食べたり、好きなタイミングで大丈夫です。 |
お造りを食べる順番 | お刺身は淡泊な味のお魚から食べるのが良いとされています。 白身魚、貝類、赤身魚の順番が一般的です。 |
醤油皿 | 和食は器を手で持って頂くのが基本なので、醤油皿も手に持っても大丈夫です。
その方が食べやすく、醤油を垂らして着物を汚す心配もありません。 |
今回は鯛(たい)と鰤(ぶり)のお造りでした。
着物でお食事マナー焼き物
会席料理などでは簡単に全て食べられるように、骨や頭が付いた魚は出てきません。
今回は鰆(さわら)の焼き物です。
自分が食べやすい大きさに箸で切って頂きます。
酢橘(すだち)などが付いている場合は、絞る際に隣に飛ばないように手を添えるのがマナーです。
着物でお食事マナーご飯
今回は香りも高い鯛飯です。
ご飯はお代わりが欲しければ「お代わりを下さい」と言っても大丈夫です。
香の物(漬物)も、お店によって特徴が違うため必ず食べてみることをおすすめします。
着物でお食事マナーデザート
茶道では、お菓子はお茶をいただく前に全て食べて、お茶の味や香りをいっそう引き立ててくれる役割を果たすももです。
今回は、椿もちでかなりのボリュウームがありますが、その後のお抹茶を飲んでも甘味を感じました。
食べやすい大きさに切って食べるようにします。
以上が、日本料理の流れと基本的なお作法です。
今回のマナー講座を通して学んだ「器を持って頂く」「箸は箸置きに置く」などの基本の作法は、見た目の美しさに配慮した作法でした。
その場に一緒にいる方の作法が美しいことは、料理もより一層美味しくみせてくれる心づかいだと感じます。
器を大切に扱うこと作法を美しく見せることは、相手を思ってのマナーなのですね。
内面の美しさと共に着物好きが気になるのは、やはり外見の美しさですね。
そこで、最後に今回のお食事会では、皆さんどのような着物のコーディネートをしていたのかを紹介します。
お食事会ではどんな着物コーディネートするの?
一言でお食事会と言っても、格調高い建物で目上の方々が多く集まる会や、気の合う仲間とホテルパーティーなどさまざまです。
今回はマナー講座ということで、式典でもお祝い事でもなかったので、参加されている方のコーディネートは比較的カジュアル寄りでした。
会場が、歴史のある数寄屋建築で登録有形文化財にも指定されている格調高い建物でしたのでカジュアルだけど品のある感じが多かったように感じます。
種類でいうと下のようにさまざまで、紋は入っていない「略礼装」ぐらいの格の方が多かったです。
- 絞りの付下げ
- 御召
- 色無地
- 大島の訪問着
- 染めの訪問着
- 紬の訪問着
帯は「洒落袋帯」「名古屋帯」がほとんどです。
当日はあいにくの雨だったので受付では、雨コートを預ける人でいっぱいでした。
雨の日のコーディネートや冬場のコートなども何を合わせるのか悩めるところですが、そんな時は下の記事を参考にすると選びやすくなると思います。
合わせる鞄に迷った時は➡ 着物の普段着用の鞄(かばん)の種類を紹介!おすすめのコーディネートも!(https://kimono-cocoro5.com/kimono-kaban-ko-de/)もおすすめです。
そして、上巳の節句が近いこともあって、会場にはお雛様や桃のお花飾りのおもてなしの心が沢山、季節の移り変わりを楽しむこともできました。
そんなおもてなしの心を観察することも、自分自身の心づかいに反映させるためのお勉強になりました。
今回のマナー講座を受けてみて感じたことは、日本だけでなく世界のいたるところで、ほんの小さなことからでも相手を思うマナーがあること。
そんな小さなことに、普段から心を配れる女性(男性も)はやはり美しいと感じました。
着物を着て美しい立ち居振る舞いができるようになるのは、その人の人間性や心の在り方で、普段の生活の仕方が重要ですね。
着物を着ているからこそ、着物を通して外見だけでなく内面も美しい女性になりたいですね。
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