牛首紬加藤先生
トップ画像のコーディネート

着物・・・青柳櫛引き紬訪問着
帯・・・組織全通袋帯
(男性・・・・加藤改石さんご子息の加藤治さん)

大島紬、結城紬に続いて、日本の三代紬の1つとも言われている牛首紬。(諸説あり)

着物好きな通の間では、
「1枚は持っていたい紬」
としても、人気の高い種類です。

kazumikazumi

私も着物に興味を持ち始めた頃に、一番に欲しかった着物の種類です。

最近は盛夏にもコーディネートできるように、薄手のシャリっとした質感が特徴な夏牛首紬など、種類も豊富になってきました。

コロナ過が進むにつれて、その丈夫さと絹の肌触りの良さから、マスクとしても人気がある織物です。

そんな人気の着物なだけに、ヤフオクなどネットでも最近良く見かけるけど、その価格の差もピンからキリまでで
「何を基準に妥当な価格を判断して良いのか?」
疑問に感じてる人も多いのでは無いでしょうか・・・。

自分の着物道にマッチした牛首紬を満足して楽しむためにも、価格と品質に納得して選びたいものです。
そこで今回は

  • 価格の違いは何?
  • 証紙はあくまでも1つの目安にすぎない
  • 牛首紬とは何?
  • 「釘抜き紬」その特徴にはこんな事実も

 
などをお伝えしたいと思います。

今のネット社会では自宅に居ながらもある程度の情報収集はできるけど、その情報の良し悪しを見抜く力を持ち合わせていなければ間違った知識を吸収してしまう事も否めない事。

今回は「販売会」で牛首紬を作っている職人さん(加藤改石さんご子息の加藤治さん)から直接お伺いした内容なので安心して読み進めてくださいね。

価格の違いは何?

牛首紬に関わらず、着物は同じ種類の着物でも価格に雲泥の差がある場合があるので、ユーザーからしたら何を基準に価格を判断してよいのか迷ってしまいます。

そんなときに大まかに覚えておきたい価格の違いを見極めるためのCHECK項目は

  1. 手織りか機械織りか?
  2. 使われている糸は国産か?外国産か?
  3. 牛首の特徴はどの程度の割合で入っているか?
  4. どんな工程で作られているか?
  5. 組合や協会を通しているか?いないか?

などがあります。

①手織りか機械織りか?

牛首紬の場合、発祥当初は全てが手織りで作られていましたが、2014年に白山工房が力織機を導入してからは、手織りと機械織りの二種類の織り方ができるようになりました。

当然のことながら、手織りで作られた牛首紬の方が手間がかかるので価格が高価になりますね。

②使われている糸は国産か?外国産か?

相性の良い雄と雌の二頭で作られる牛首紬の糸の元である玉繭(たままゆ)は、残念ながら国産で養蚕されることがとても難しい世情になっています。
 
しかし苦渋の選択でも、現代は中国産の玉繭を使って何とか牛首紬を維持しようと産地の方も尽力されています。
 
現在は牛首紬の約90%が中国産の玉繭でできた※玉糸で作られていて、国産の玉繭を使った牛首紬に出会えることすら貴重で高価な糸になります。
 

※玉糸とは・・・二頭の繭から作られる生糸の事です。 2本の繊維が 互いに交錯して節(フシ)の多い丈夫な糸

 
私が牛首紬を購入した何年か前は、「牛首紬は糸が採れないし、作る人もいなくなるから今のうちに買わなければなくなるよ!」と言われて焦って購入を決めました。
 

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ですが、機械織りで中国産の糸なのに価格は手織りの国産糸なみでした


 

後染の訪問着で値引きして80万円。
着物の正当な価値と価格の相違がありますね。

今と同じぐらいの知識を持っていたら絶対に購入をしなかった価格です。

上質な純国産の玉糸を使い、日本の自然を慈しむ草木染で一糸一糸丹精込めて手で織ってあるならこの価格でも納得です。

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それが出来上がるまでの手間や心が惜しみなく費やされた物だとわかるから・・・。

いち着物ファンとして、価格の高い着物でも自分が納得できる価値が見いだせれば、職人さんに敬意と感謝を込めてその着物を手に取ると思います。

何度もこのブログでお伝えしてますが、この業界は残念なことに「無知な人は損する」体制がまだまだ残っています。

私のように知識を持った時に後悔しないためにも、何が基準で価格が決められるのかや、おおよその相場をしっかりと自分自身で判断できるようにしてください。

ひいてはそれが着物文化を守り繋いでいくために、私達ユーザー側が唯一できることで、産地の職人さん達も望んでいることだと感じます。

③牛首の特徴はどの程度の割合で使っているか?

牛首紬の特徴は、絹のなめらかな風合いがあるのにも関わらす、どの糸より丈夫な玉糸を使っていること。

発祥当初は、その玉糸を「縦糸」「緯糸」共に使用して作っていました。
 
しかし現代は経糸に生糸、緯糸に玉糸でも牛首紬と定義付できるようになりました。
 

すなわち、玉糸をどのぐらいの割合で使用しているのか?で価格の違いが出てきます。

購入する時は、しっかり確認して価格を見極める時の1つの基準にして下さい。

④どの工程で作られているか?

牛首が作るために必要な工程はいくつかありますが、その工程の定義は指定登録された種類によって変わってきます。

例えば、牛首紬は主に

  1. 石川県指定無形文化財
  2. 経済産業大臣指定 伝統的工芸品
  3. 地域団体商標「牛首紬」(登録第5015695号)
  4. 石川県牛首紬生産振興協同組合「認定織物」

の4つの種類があります。

それぞれの種類が指定した材料や工程技法などをクリアしなければ、検査に合格することができません。

経済産業省が認める「伝統的工芸品」に指定されるには、下の様な14もの工程で作られます。

  1. まゆより
  2. 煮繭(しゃけん)
  3. 座繰製糸
  4. くだ巻き
  5. 八丁撚糸(ねんし)
  6. 精錬(せいれん)
  7. 糸叩き(糸はたき)
  8. 染色(先染め)
  9. 糊付け
  10. 糸繰り
  11. 整経(せいけい)
  12. 機掛け
  13. くだ巻き
  14. 製織

当然、工程が多くて高度な技法になればなるほど、価格は高騰します。

⑤組合や協会を通しているか?いないか?

どの産地でも言えることですが、あえて地元の組合や協会に所属せず独自に産地の織物を作っている方もみえます。

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検査をするまでに、費用と手間が余計にかかってしまい、その分の価格が高くなるなど他にも色々な理由があります。


組合や協会の検査を通さないため合格印や証紙はありませんが、産地独特の風合いや工程を守りつつ、もの作りをされてる職人さんの物は比較的安価な設定です。

証紙はあくまでも1つの基準にすぎない

結論から言うと、証紙を「価値の見極め」だけに必要とするならば、それほど意味をなさないかと感じます。

意味が無いと言い切ってしまうと語弊がありますが、証紙だけで品質を見分けることはできないということです。

私たちユーザーは、価格の違いや質の良し悪しが分からないため、証紙をそれらを判断する一つの目安として考えていますよね。

証紙は発行している団体が、指定した条件に合格した証として貼るのですが、着物業界では残念ことに証紙そのものを改ざんしたり不正に検査を通したりしていた時代がありました。

現代は、そのようなことが安易にできる時代ではありませんが、ユーザーが混乱するようにあえて証紙の種類を増やして分かりにくくしている場合もあります。
 
そうすることで、よほど目の肥えた着物通にしか適正価格を見抜かれる心配が無いため、価格を自由に設定できるからです。
 
全ての証紙がそうとは言いませんが、
「証紙があるから大丈夫!」
という、安易な判断や品質の基準とするのは危険です。
 
自分が納得する価格で着物や帯を購入したいのであれば、先にお伝えした「価格の違いを見極めるためのCHECK項目」を参考に、自分自身の目で判断できる知識を付けてくださいね。
 
ちなみに、牛首紬の証紙についてのレアなお話を1つ、

2014年2月末に白山工房が力織機を導入する前までは下の様な証紙が貼られていました。
牛首紬加藤先生白山連名証紙
「加藤織業場」さんと「白山工房」さんの連名で記載されてた証紙がついていたのでこの証紙がついてる製品は平成26年より前に作られた物になります。

今では中々お目にかかることの無い、珍しい証紙です。
だからといって高価になるとは限りませんが、「ウォーリーをさがせ」みたいな感覚で、見つけたらちょっと嬉しいかもです。

牛首紬とは何?加藤改石・白山工房とは?

現在の牛首紬は、加藤織業場さん・白山工房さんの二箇所の織元さんだけで作られています。

相性の良い雄雌二頭のお蚕さんが作る玉繭によって作られる『牛首紬』は石川県白山市白峰(旧牛首村)に源氏の落人が村に住み着き、その妻がその技術を村人に伝えたことが始まりだと言われています。
 
昭和35年頃には廃業していまい、産地はダムの底になって以来「幻の織物」と呼ばれていましたが、二か所の織元だけが何とか復活してくれて現在に至ります。
 
 
一つ目は加藤改石さんを中心とする手織りオンリーの『加藤織業場』さんです。

昔ながらの手織りに拘って作られる為、月に数十反しか作れないとても貴重な白生地専門織元です。

生産性、効率性を求め分業制で生産される紬が多い中、撰繭(せんけん)から製品までを一工程とする紬は他にない事からこの織元の貴重さが取り沙汰されるのも納得。
参考↓↓↓↓
加藤手織牛首つむぎ ​旧:加藤機業場 公式サイト
現在も、加藤改石さんとこの記事のトップ画像に写っているご子息の加藤治さんを中心に営まれています。
 
ちなみに先代の加藤改石さんは、2021年の7月で100歳になられます。
お孫さんが、日々の元気なお姿をインスタでアップしてくれています。


 
こうしてSNSを通じて産地の職人さんを知れることができるだけでも、より一層着物への愛着や職人さん達への敬意が増しますね。
120歳まで!ずっと見ていたいです。

二つ目は白山工房(西山産業開発株式会社)さんです。

コンクリート砕石や土木事業を中心とする株式会社西山産業の繊維部門です。

地元の伝統産業を残して行きたいとの強い信念によって出来た部門で、立ち上げ当時は全てが手織りでした。

伝統技術継承の難しさや手間の掛かる様から、平成25年から力織機の導入を行い今では手織り品の一部を残してほとんどを力織機で行っています。

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そうまでして牛首紬を産業として末永く継続させたいという強い思いからだそう。


参考↓↓↓
白山工房さん

加藤改石さんと同じく白山工房さんも牛首紬の魅力や日々のイベントをインスタで紹介してくれています。

現地に行かなければ見れない、より詳しい牛首紬の工程や物語が見ることができますよ。

「釘抜き紬」その特徴にはこんな事実も

現代は経糸に生糸、緯糸に玉糸でもの牛首紬と定義付されているのに、何処に行っても『釘抜き紬=牛首紬』と言われています。

俗に言う『釘に引っ掛けても釘が抜けてしまうほど丈夫な紬』は縦糸、緯糸共に玉糸を使用していた牛首紬だけを指していたとか。

今の時代には中々生産されなくなった品だから仕方ないのですけど、釘抜き紬の認識で購入した私にたいな人は拍子抜けしてしまいますよね。
 
今回のように、

  • その品に何を求めているのか?
  • 妥当な価格を見極めれる?
  • その品質を見極めれる?

など、自分自身で見極める知識を付けることが、何よりも納得いく物に巡り会えるかどうかの鍵ですね。

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