子供の卒業式に参列するのに、せっかくなので着物を着て行こうか考え中。
もし着物をきていくなら、
「まだまだ寒い時期だし、羽織ものは何を着て行けばよいの?」
「日常ではない学校行事の式典なので、羽織ものでも色あわせや丈などの決まりがあるのかな?」
などの、悩みどころも沢山でてきますよね。
そこで今回は、卒業式の母親が着物の羽織を着る時の選び方や、色あわせや丈などを紹介しようと思います。
卒業式の母親にふさわしい羽織の種類
まずは卒業式の母親にふさわしい、着物の羽織ものの
- 羽織
- 道中着
- 道行コート
- 雨コート
を中心に、下記の項目で分かりやすく紹介します。
- 特徴(その羽織ものの形状や、仕立て方の違いなど)
- 使用目的(どのような使用目的があるのか)
- 使用時のマナー(使用時に注意する点や使用方法)
①羽織
特徴 | 名前の通り着物の上から羽織り、羽織紐(はおりひも)を使い着装する物です。
着物の前が全て隠れるタイプのコート類とは違い、前から見ると、帯がみえる形なのでコーディネートのオシャレ感が強い感じをうけます。 袷から夏単衣の薄物、レースやビロードまで、季節に合わせてお好みの素材で仕立てる事が可能です。 |
使用目的 | 防寒具、お洒落着、塵除け(ちりよけ:道中のホコリや、ちり、引掛けなどから着物や帯を守る) |
使用時のマナー | 羽織は茶室以外であれば、室内でも着ていても良い物とされています。
洋服で例えるとカーディガンの様な扱いなので、羽織の上から雨コートやその他コートを着ることも可能です。 着方のマナーとして羽織の衿は後ろの部分だけを外側に山折りをして、下に着ている着物の衿元に添わせます。 かつては、黒羽織に一つ紋を略礼装として使う時代もありましたが、現代はそのような使い方をしている人は、あまり見かけませんね。 羽織もの自体に第一礼装や、準礼装などの格もなく(女性の場合)、お洒落や防寒具として使用する人が多いです。 |
②道中着
特徴 | 「道中衿」と言われる衿のデザインのコート。 着物のような打ち合わせになった衿の形をしています。 袷から夏単衣の薄物、レースやビロードまで、季節に合わせてお好みの素材で仕立てる事が可能です。 現代的な印象のデザインのコートです。 |
使用目的 | 防寒具、お洒落着、塵除け(ちりよけ:道中のホコリや、ちり、引掛けなどから着物や帯を守る役割) |
使用時のマナー | コートなので外出時に着て、室内では脱ぐものとされています。 脱いだ後に小さく畳んで自身で持ち運べるように、風呂敷や、折りたたみ可能な入れ物を用意しておくと便利です。 |
③道行きコート
特徴 | 「道行き衿」と言われるデザインの衿の形をしたコート。 衿あきを四角にして、額縁みたいな形にしたもの。 袷から夏単衣の薄物、レースやビロードまで、季節に合わせてお好みの素材で仕立てる事が可能です。 昭和の時代に多く見られた形ですね。 |
使用目的 | 防寒具、お洒落着、塵除け(ちりよけ:道中のホコリや、ちり、引掛けなどから着物や帯を守る役割 |
使用時のマナー | コートなので外出時に着て、室内では脱ぐものとされています。 脱いだ後に小さく畳んで自身で持ち運べるように、風呂敷や、折りたたみ可能な入れ物を用意しておくと便利です。 |
④雨コート
特徴 | 雨の日に欠かせない雨コートは着物をスッポリ覆う裾(すそ)ギリギリの丈に、撥水加工を施して仕立てます。
衿の形、素材は自由に決められます。 |
使用目的 | 雨よけ |
使用時のマナー | 羽織、コートの上から着用も可です。 コートなどの上から着ても良いので、雨コート自体が紋紗(素材の名前)などの薄物でも一年中使用できます。 |
その他の衿のデザインの羽織もの
都衿(みやこえり) | 衿あきを四角にするが、四角の角が曲線の物 |
千代田衿 | 衿合わせが打ち合わせで、衿の線が曲線になった物。 |
以上が羽織ものの種類になり、衿の形で名前が違ってくるのが分かりますね。
どの種類の羽織ものも卒業式に相応しいですが、種類が多すぎて
「どんな基準で選べばいいの?」
と悩んでしまう人の為に、次は卒業式当日の羽織ものの選び方を紹介したいと思います。
卒業式の羽織の選び方
一般的に卒業式は2月から3月に行われる場合が多く、地域や気候によっては底冷えが激しい体育館でのガマン大会みたいな日もあり、防寒具としても着物の羽織ものは必需品です。
ですが、着物の羽織ものも種類が沢山あって、何が卒業式に相応しいのか悩む人の為に、ここでは、卒業式の羽織ものについてのお話をしたいと思います。
羽織ものは、紋をいれるか入れないかで、格が上がります。
「卒業式には紋が入っていたほうが格が上がって相応しい」
という意見も有りますが、だからと言って卒業式の為にわざわざ紋をいれるのは、普段着として着にくくなってしますので、必要はないと思います。(地域によって違うのでご自身が出席する地域で配慮して下さい)
昔から着物の上に羽織をはおらずに歩く姿を「帯付き」(着物と帯だけの着姿)と言います。
帯付きは夜の女性がする着方と認識している人も中にはみえ
「着物を着る際は羽織ものは絶対着なければいけない」
と言う人もいます。
他にも、着物の羽織ものに対してのルールみたいなものは諸説有りますが、諸説あると言うことは、何が正解で何が間違いなのかの理論は成り立ちませんね。
それが、例えお子様の卒業式であっても考え方は一緒です。
「帯付きはみっともないと言われるのが嫌だから」
「帯付きで伺うと相手先に失礼にあたるから」
「寒いと思った時の防寒具」
「トータルコーディネイトの一部のお洒落として」
と、羽織ものを着る時の感覚は人それぞれですが、着る時のマナー(羽織は室内で着て良くて、コートは脱ぐ)さえ把握していれば、自由に使用すれば良いと感じます。
どんな感覚で着用するにしても、最終的に一番考慮する部分はその日の天気だと思います。
ポカポカ陽気の温かい日なら
「着物をスッポリ覆うコートだと道中暑いので羽織にしよう」
寒さが、まだまだ厳しいのなら
「防寒具としてコートを着よう」
雨降りの日なら
「着物を守る為に雨コートを着よう」
この様な選び方で大丈夫です。
私は子供が多いため、これまで幼稚園から高校まで12回の卒業式に参列しています。
卒業式の気温はその年により様々ですが、例年帯付きの人(羽織ものを着ない人)が一番多いですね。
昔の様に、「着物の上には羽織もの」の認識は、着物離れが進みむ中、若者のアンティークやオシャレ感覚の着物が流行りの現代には、薄れゆく認識なのかもしれませんね。
私はコートや羽織を、その年の気温に合わせて着ていきますが、あまりにも寒い年の卒業式の場合は、体育館や教室という室内でも、コートを着たままの日もありました。
室内でのコートの着用は洋服でも着物でも脱ぐのがマナーですが、体調を壊すまでのマナーでは本末転倒だと私は感じます。
出向く先のTPOにもよりますが、自分の子供の卒業式などの式典なら誰に失礼にあたる訳でもありませんので大丈夫でしょう。
最後に羽織ものの色あわせや丈、その他の決まりごとをご紹介します。
羽織ものの色あわせや丈、その他の決まりごと
羽織ものの種類や使用方法の他に、卒業式に相応しい丈や色なども沢山あって悩みそうですが、実際には相応しい丈や色などの決まりやルールはありません。
着物を着ようと思うと、どうしてもマナーやルールが気になってしまいますが、私が着物を楽しむ過程で学んだ事は、現代の着物は基本的に洋服のマナーやルールと変わらないという事です。
かつての衣類には身分や権力を表す大切な役割を持っていた時代があったり、江戸時代などは、「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」(贅沢(奢侈)を禁止して倹約を推奨したり強制するための法令や命令)などで、自由に自分の着たい着物が着れない時代がありました。
ですが、現代の着物は一定のルールやマナーをわきまえていれば自分で好きな丈、色を着ても良い時代です。
一定のルールやマナーは洋服の場合当たり前の様に認識していますよね。
例えば、卒業式に洋服で出席する場合、誰よりも目立つ純白のドレスで参列する母親はいません、上から下まで真っ赤なスーツで参列する母親もいないでしょうね。
着物も一緒です。
羽織ものの丈は膝上から着物と同じ裾(すそ)ギリギリまでの丈があります。
色にしても真っ白から真っ黒、総柄から、絵羽模様の羽織ものまで存在します。
どんな丈、色であれ、卒業式に出席する母親の自由です。
母親は
「お子様の成長を見届ける立場」
「お世話になった学校、先生方に感謝の意を表す立場」
などを考えて、子供や先生よりも目立つ金銀、総刺繍などがあしらわれた着物を着たりしないで、一歩下がった立場の装いをするのが良いですね。
羽織ものの丈はその時代毎に流行りなども存在しますが、現代は膝より下の長い丈が流行りですね。
長くなるほどにクラシックな雰囲気が強調されるので、現代的なコーディネートをしたい人にはおすすめですが、着る人の年齢、身長、などを考慮し、自由に着こなして楽しんで下さい。
色は、洋服での卒業式の場合でもブラックフォーマルの方が比較的多く感じますので、着物も自分が主役にならない色で、下に着ている着物や帯に合わせてコーデイネートを考えれば大丈夫でしょう。
私が初めて幼稚園の卒業式に出席した15年前に比べ、最近は着物姿で出席している母親が本当に多くいらっしゃいます。
大切なお子様の卒業式に、母親も着物で正装して出席するだけでも、会場の格が上がり、周りの雰囲気を一気にあげる事ができるのが着物です。
羽織ものに関しては種類も丈も色も、あまり堅苦しく考えずに、卒業式を着物で参列する楽しさや、お祝いの気持ちを味わって下さいね。