量産を目的とした現代の江戸小紋はプリントで染めるものが増えている中、京都市右京区で人間国宝の伊勢型紙と手染めにこだわって、小紋を染め続ける染処があります。
着物などに一定の柄を染める時に使う型紙こと。
国内で流通する伊勢型紙の90パーセント以上が三重県鈴鹿市の白子・寺家・江島地区で作られています。
平成最後の31年3月にちょうど創業100年を迎え、5月の令和元年と同時に101年目に入るという大きな節目の年を迎えた
重要無形文化財(人間国宝)の制度が出来た最初の伊勢型紙認定者
- 中村勇二郎(なかむら ゆうじろう)/道具彫り
- 六谷梅軒(ろくたにばいけん)/錐(きり)彫り
- 南部芳松(なんぶ よしまつ)/突彫り
以上3名の伊勢型紙の人間国宝が彫った型紙を保有し、専用使用権をもつ染屋さんです。
「伊勢型紙で手染め」というだけでも貴重なのに、人間国宝の型紙を独占で使っているのは凄いですね。
古今さんが作る小紋は伊勢型紙を使って染められるので伊勢型小紋とも呼ばれていますが、一般的に言う江戸小紋として作られています。
江戸小紋とは江戸(東京)で染められる小紋のことを言います。
加賀で染められる小紋は加賀小紋。
古今さんは京都で染めているので、そういう観点からしたら京小紋になりますが、伊勢型紙を使用して染められたモノを江戸小紋とも言う場合があります。
この辺りが着物の世界の????ですが^^;
国宝級の卓越した技で作られた型紙を使った小紋は、染るのも難しく、まさに日本人の持つ繊細さや技術の高さを象徴した工程で、古今さんだからできる絶品です。
その全てが手染めで、注文が入ってから染められるこだわりの作品の数々から
「江戸小紋を誂える(あつらえる)なら古今さんで!」
と言う着物ファンも多くいます。
今回は、そんな古今さんで語り部として活躍している田中誠さんのお話をもとに、伊勢型紙や古今さんのご紹介をしたいと思います。
着物はじめの一枚は
これから着物を始めるあなたこそ、「これぞ江戸小紋」という世界を知っておくことで、これからの着物生活の大きな一歩になりますよ。
染処古今さんの保有する伊勢型紙とは
古今さんが保有する人間国宝が作った伊勢型紙とはそもそも、どのようなモノなのか気になりますよね。
■人間国宝六谷梅軒の伊勢型紙
まず、伊勢型紙には大きく分けて下記の4種類があり、技法ごとに彫刻刀も使い分けます。
縞彫り(しまほり) | 定規を使い一定の間隔で縞を彫ります。
1本の縞を三度続けて小刃でなぞるため、高度な技術が必要です。 わずか1cmの中に、最高で11本もの縞を彫ることもあります。 最後に「糸入れ」という縞と縞がずれないように目に見えないほどの糸で繋いでいく作業が必要です。 |
突彫り(つきぼり) | 5~8枚の型地紙に刃先が1mm~2mmの小刃で、垂直に突くようにして前に彫り進みます。
補強のために紗張りをすることもあります。 彫り口が微妙に揺れるので独特のあたたかい感じがあります。 |
道具彫り(どうぐほり) | 刃自体が、花・扇・菱などの形に造られた彫刻刃を使って色々な文様を彫り抜きます。
道具彫りの特徴は文様が均一になること、多様な形が表現できることです。 江戸小紋では一般的な技法で「ごっとり」とも呼ばれています。 |
錐彫り(きりぼり) | 小紋を彫る技法では、鮫(さめ)、行儀(ぎょうぎ)、通し(とおし)、霰(あられ)などの種類があります。
刃先が半円形の彫刻刃を型地紙に垂直に立て、錐を回転させながら小さな孔を彫っていきます。 1平方センチに100個ほどの穴が彫られた作品もあり、単調な柄だけに難しい技法です。 |
これらの型紙は、それだけを作り続ける専門の職人さんが担当します。
型紙を作るための道具(彫刻刀)に使う素材の選定、道具作りなど全てを職人さんが一人で行なうそうです。
自分でこれらの道具を作ってから、やっと彫りの作業に入れるんです。
そして、伊勢型紙の地紙となる紙もしっかりしてないと、繊細な彫りや何十回と行われる染に耐えれないので、地紙の製造も重要な工程になります。
■伊勢型地紙の製造工程
- 法造り(ほづくり)・・・200枚から500枚の和紙を重ね規格寸法に裁断します。
- 紙つけ・・・3枚の和紙を紙の目に従ってタテ、ヨコ、タテとベニヤ状に柿渋で張り合わせます。
- 乾燥・・・紙つけの終わった紙を桧の張板に貼り、天日で干します。
- 室干し(むろがらし)・・・乾燥した紙を燻煙室へ入れ、約1週間いぶし続けると、伸縮しにくいコゲ茶色の型地紙となる。さらにもう一度柿渋に浸し、天日乾燥→室干し→表面の点検という工程を経て型地紙になります。
伊勢染型紙には
こうして強くて伸縮しない性質の型紙が完成するのですね。
三枚合わせた物を一枚の紙として、それを八枚重ねて彫り、刃先の均等な真ん中の和紙を型紙として使用します。
1983年昭和58年4月通商産業大臣より、「伊勢形紙」の名前で国の伝統的工芸品 (用具) に指定されました。
最盛期には250名ほどいた伊勢型紙の職人さんも、現在では40名ほどに激減しているので、これからはもっと貴重性の高い工芸品となるでしょうね。
古今さんの染方は必見!
古今さんでは人間国宝の型紙を使ったり、オリジナルのデザインで作られた型紙を使い着物を作っています。
大まかな工程は
- 伊勢型紙をデザインする
- デザインを基に型を彫る
- 色糊を造る
- 板場で型染め
- 最後に地染めをする。
伊勢型紙の準備ができたらいよいよ染の工程に入ります。
染の工程は、実に7工程もあります。
- 色糊り作り
- 型つけ(糊置き)
- しごき染め
- おがくず置き
- 蒸し・水洗い
- 乾燥・ゆのし
- はき合わせ・検品
見本の反物を見たお客様から注文が入ってから、見本と同じ色で作ってくれる古今さんの色糊作りは、見本の色と同じ色を作ることがまず難題。
最低でも「色作り3年~4年」と言われているそうです。
もち米の糠(ぬか)と米の粉と塩をまぜて作った基本の糊は、ぼうせん糊(他に色が混ざらないようにする)にしたり、色を混ぜて色糊にします。
そして、もみの木の正目の一番良い部分を使った長さ7メートル、幅50センチ、重さ40キロもある一枚板に生地を張りっていきます。
この板は表と裏の両面を交互に使います。
この板の上に貼られた生地に、作った伊勢型紙を置いて染めていきます。
生地の上で型紙を順番にずらしながら染めていき、次の型紙を合口とよばれる位置でピッタリと合わせることで、柄と柄のつなぎ目に一寸の狂いもなく柄を合わせることができます。
まさに職人技
この作業を一反の反物で30回~60回繰り返すそうです。
染処古今さんでは、この染の技術を伝承するために若い職人さんの育成にも力を入れています。
いくら人間国宝の型紙が残っていても、それを使いこなせる染の職人さんがいなくなったら元も子もありませんもんね。
この日本が誇る素晴らしい染の着物を、自分たちの子孫まで手に取ることができるように、頑張ってほしいです。
古今さんで行われている工程はここまで、後は別の工房で作業します。
伊勢型紙をデザインする事から始まり、それを基に型を彫り、色糊を作って板場で型染めをしてから地染めをする。
伊勢型紙の職人さん、染めの職人さんそれぞれが卓越した技を発揮することで、人の手で染めたとは思えないほどの均一な柄の染が特徴の江戸小紋が出来上がるのですね。
小売なし!貴重なオリジナル・新作の数々
染処古今さんは、一切小売はしていないので私達消費者はどこかの呉服屋さんでしか作品を手に取ることができません。
今回は、愛知県の豊田市にある川平屋さんという、呉服屋さんで古今さんの作品を見せてもらうことができました。
下の着物は人間国宝中村勇二郎さんの献上古代菊をもとに作られた訪問着です。
私も着装してもらいましたが、使われている色合いが優しいため、顔映りも良く感じられる豪華な訪問着です。
ちなみに、皇室献上品は同じものが二度とできないように、型紙、小紋、彫道具まで全て献上するそうです。
下の反物は、六谷梅軒が人間国宝に選ばれる決めてとなった型紙で染められた小紋です。
写真では柄が見えないのが残念!
最近の新作として、「波に千鳥 鉄緑」小紋も着装させてもらえました。
こちらの、小紋の生地は日本で一番と言われている、
とにかく生地のしなやかさと肌触りの良さが、纏ったときに心地よく今までに味わったことが無いような上質な生地でずっと触っていたくなる。
染とは関係ありませんね^^;
ですが、せっかく卓越した日本が誇る技法で作られた特別なお着物なので、生地自体にもこだわってくれるのは、本物を求めている方からしたらありがたいことですよね。
そして、最近古今さんが取り組まれてる新しいプロジェクト?博多織の西村織物さんとのコラボ帯も見せていただけましたよ。
伊勢型紙が残っていれば、それを使って染める職人さんがいる限り、新しい作品として様々な製作することが可能です。
今回のコラボ作品は染×織りと、新しいタイプの試みですが、私達消費者からしたら物珍しい希少なコラボはとっても価値があるように楽しさを感じます。
これからも各方面の染や織りとのコラボや、新しい取り組みで着物文化に新しい風をふかしてほしいですね。
以上が染処古今さんの紹介でした。
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(地図上のマカーをクリックすると詳細あり)
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