友人や知人が結婚することになり、結婚式に呼ばれるのは喜ばしい事ですよね。
折角お祝いの席なので着物を着て結婚式に出席したいけど、
「どんな着物を着ていけば良いのか?」
やルールやマナーなどわからない事も多いです。
そこで今回は、そんなお呼ばれ着物の色や種類を、呼ばれる立場別(既婚者・未婚者)に分けて紹介したいと思います。
お呼ばれ着物は洋装、和装、ホテル式、カジュアル式と、結婚式のスタイルによっても変わりますが、今回は新郎新婦も正装で、チャペルや神社で結婚を誓う一般的な「挙式」での設定で紹介しますね。
合わせて知っておきたいマナーやルールもありますので、当日の結婚式で役立ててくださいね。
友人・知人の結婚式で未婚女性が着る着物
友人・知人の結婚式に参列する場合は、基本的に親族の格より低い準礼装が相応しいとされています。
未婚の友人・知人が着てよい着物は「振袖」「訪問着」「付け下げ」等です。
① 振袖
振袖は未婚女性の第一礼装で友人、知人も着ても良い着物です。
結婚式で新婦が着る振袖
・中振袖(95cm~115cmぐらい)
結婚式に参列、成人式に着る振袖
・小振袖(85cm~95cmぐらい)
成人式、卒業式の袴と共に着る振袖
と、振りの長さによって「大」「中」「小」と種類別に使用用途も変わってきます。
一般的に結婚式に参列するときに着用する振袖は中振袖です。
成人式に着用する着物と一緒の袖の長さですから、成人式で誂えた(あつらえた)振袖をそのまま知り合いの結婚式でも着用する人が多いのではないでしょうか。
未婚の女性のみが着ることができる着物で結婚式にも相応しい着物です。
紋が付いているか?いないか?は振り袖は柄行きが総柄の物が多いため紋は入れない事が多いので無くても大丈夫です。
本来24歳ぐらいまでの未婚女性が着るものでしたが、最近ではあまり細かく考えず20代の未婚女性なら振袖を着て良いでしょう。
カジュアルな披露宴なら、
「20代前半や10代の既婚の女性も振袖を着ても良いのでは?」
と言う意見もよく聞きますね。
その場合は基本的にはNGですが両家に了承済みなら、場も華やかになり喜ばれるでしょう。
振袖を着る際の気にしておきたいマナーは、振袖の色使いです。
花嫁が色打掛や大振袖(引き振袖)を着る場合は、あらかじめ色目や柄を聞いておき、なるべく同じような色目は避けるようにすると良いとされています。
ですが、振袖を二枚も三枚も持っている方は珍しいと思いますので、”なるべく”で大丈夫かと思います。
色柄ともに華やかな振袖を着ていく事自体に、祝福の気持ちが表れ会場の雰囲気や格も一気に上がり、周りからも喜ばれるので、未婚者にはおすすめです。
②訪問着・付け下げ
「訪問着」「付け下げ」も、友人・知人の未婚者が着て良い着物です。
紋の数にもよりますが、訪問着、付け下げは準礼装、略礼装になりますので、友人・知人の結婚式には相応しいですね。
「訪問着」「付け下げ」の違いは、柄の付け方になり、付け下げの方が訪問着より少し格下げになりますが、ほとんど同格に近いです。
訪問着は、胸、肩、袖、裾などに模様が繋がる着物をさします。
お仕立て前は反物ではなく、仮絵羽(柄に合わせて着物の形に仮縫いしてある)の状態で販売店に置いてある着物です。
付け下げは、仕立てたときに模様が肩山、袖山を頂点に前身頃、後ろ身頃の両面が上向きに配置されている着物をさします。
お仕立ての前は反物の状態で販売店に置いてあります。
袖、身頃など『墨打ち』と呼ばれるしるしがしてあり、墨打ちに従って反物を裁断して柄を合わせるように、仕立てていきます。
訪問着より格が低いため、着て行ける場所も広がり訪問着より使用用途が多い着物と言えるでしょう。
訪問着、付け下げともに紋の有り無しですが、基本は紋ありが良いとされていますが、今の時代で紋ありで仕立てる人は少ないです。
結婚式でも知人・友人としてお呼ばれなら、紋を付けないで出席している人が多いように感じます。
友人・知人の結婚式で既婚女性が着る着物
友人・知人の結婚式に参列する場合は、基本的に親族の格より低い準礼装が相応しいとされています。
既婚の友人・知人が着る着物は「訪問着」「付け下げ」です。
訪問着・付け下げ
使用用途は未婚者と同じです。
紋の数にもよりますが、訪問着、付け下げは準礼装、略礼装になりますので、友人・知人の既婚者でも結婚式には相応しいですね。
訪問着、付け下げともに気を付けたいマナーは、着物の色です。
知人・友人の着物の色は、基本的には決まりはありませんが、親族の黒留袖と同じ色である黒地の着物は親族と間違えられるので控えると良いでしょう。
(知人・友人は親族より格を下げるのがマナーです)
洋装の白色は花嫁衣装と被ってしまいますのでタブーとされていますが、着物の場合は格があっていれば特に問題はありません。
ただし、主役である花嫁さんよりも目立ってしまう様な、煌びやかで豪華な着物は、控えたほうが良いですね。
以上が、お呼ばれ結婚式の立場別に相応しいとされる着物の種類です。
未婚者・既婚者ともに、結婚式での着物を着る時のルールやマナーがありますので、紹介したいと思います。
その他のマナーやルール
結婚式での着物のマナーや、ルールはあいまいで、判断がとても難しいです。
そもそも、着物に関しては、地域や場所、年代によりルールやマナーは異なり、基本の考えも地元や、その場所の方々の判断により基準が違ってきたりするからです。
例えば、私は訪問着の色に関して
“洋装の白色は花嫁衣装と被ってしまいますのでタブーとされていますが、着物の場合は格があっていれば特に問題はありません”
と言いましたが
“白地やクリーム系の色地は花嫁衣装と被ってしまいますので控えるのがマナーです”
という意見もあります。
着物を誂える際の呉服屋などでは、同じ着物であっても
A呉服屋では「こちらの着物が相応しいです」
B呉服店では「こちらの着物は絶対に避けたほうが良いです」
などと、呉服屋によって真逆のルールやマナーを言われる事もほんとに良くあります。
一つ参考までに面白い話があります。
先ほどから結婚式に相応しい着物と言われている「訪問着」には、
① 上質な生糸から作る訪問着
② 上質な生糸を引き出せないくず繭から作る紬の訪問着
の二種類あります。
本来、結婚式に相応しい訪問着は、もちろん上質な生糸から作られる着物とされています。
しかし現代は、「大島紬」と言われる「紬」も結婚式に着て良いと言う意見もあります。
それは、着物の大手やまとの矢 嶋会長と経済学者の伊藤元重氏との対談集
「きもの文化と日本」の中での一説です。
この本の中で、「きものやまと」の会長の矢嶋孝敏さんは大島紬を堂々と結婚式で着ていくと公言しています。
そもそも、大島紬は以前は紬糸で作られていたのですが、現代は生糸で作られている着物です。
上質な訪問着を結婚式にと言う観点からしたら、大島紬は生糸からなる、これ以上ないほどの技術と手間をかけて作られている上質な着物です。
しかし、中には
「紬は紬、結婚式には着てはならない」
と言われる方もいます。
大手の呉服屋の権威ある方が良いと言っているのに、よそではダメたという人もいる。
こんなに曖昧なルールやマナーの上で成り立つのが着物です。
だとすると、結婚式での着物は
「何を基準にルールやマナーを守ればよいのか?」
「何を着たら失礼に当たらないの?」
が益々わからなくなりますが、正解は新郎新婦の両家に聞くしか、わからないと思います。
「両家の親族に直接聞くのも失礼に当たりそうで聞けない」
と思うのなら一つの情報を過信するのではなく、自分が腑に落ちるまで、色々な人の情報を調べてみるのが一番の解決策だと思います。
それを含めて私なりの大まかなお呼ばれ結婚式のマナーやルールをまとめました。
② 既婚者に相応しいお呼ばれ着物は「訪問着」「付下げ」
③ 知人・友人は親族より格を下げる
④ 洋装の白色は花嫁衣装と被ってしまいますのでタブーとされていますが、着物の場合は格があっていれば特に問題はありません
⑤ ただし、主役である花嫁さんよりも目立ってしまう様な、煌びやかで豪華な着物は、控えたほうが良いですね。
⑥ 知人・友人の着物の色は、基本的には決まりはありませんが、親族の黒留袖と同じ色である黒地の着物は親族と間違えられるので控える。
以上がお呼ばれ結婚式の着物についてのまとめでした。
私は以前、結婚式も行う老舗料亭で働いた事があり、毎週土日になると結婚式に出席する人たちに関わっていました。
創業100年近くの老舗料亭で、建物自体が、国の登録有形文化財に指定されるほどの格の高い結婚式です。
そのような格の高い結婚式場でも、子供ずれの若いママ(親族)が振袖を着て出席している場合もありました。
ひと昔前に比べて、着物を着る人も少なくなるとともに、マナーやルールも緩やかになり、着物の種類や色も本当にそれぞれでした。
人様の着姿を厳しい目でチェックしてくる人も中には見えますが、そのような人に遭遇しても、
「親族(新郎新婦)にお伺いを立てました」
と一言添えれば大丈夫でしょう。
(勿論、本当にお伺いしている場合ですが)
華やかでお祝い事の席で、今の時代着物を着ているだけで喜ばれたりします。
「誰に対してのルールやマナーなのか?」
「誰に対して失礼なのか?」
を考えた上でのマナーやルールが基本ですが、両家にお伺いを立てたうえで、その場の雰囲気も格も上げられる装いができると良いですね。